『ビッグ・ショット・ダディ』 追悼ロビン・ウィリアムズ
追悼とか言って正直ロビン・ウィリアムズにそこまで思い入れがあるわけじゃないんですよ。
彼の出演作だと小さい頃に『ミセス・ダウト』を劇場で観たのが初めてのロビン・ウィリアムズ体験で、一番好きなのは『グッド・ウィル・ハンティング』になるのかな。これ、主演作じゃないんですけど。
あの時の演技はアカデミー賞もらうのも納得で、いい役者さんであることに一切の異論はないのですが、自分の中では特に意識して出演作を観たいと思うタイプの人ではありませんでした。
むしろ、彼の死が報道されてからの俳優仲間や著名人達からの彼に向けられたメッセージの多さに、「こんなに偉大な俳優だったのか」と認識を改めたくらいです。
オバマ大統領までコメントを発表したくらいで、並の俳優じゃさすがにこれはないでしょう。
"Robin Williams was an airman, a doctor, a genie, a nanny ... and everything in between. But he was one of a kind." —President Obama
— Barack Obama (@BarackObama) 2014, 8月 12
せっかくなので何か彼の出演作を観ようと思い選んだのが今回紹介する『ビッグ・ショット・ダディ』で、これ2009年の作品なのに全くきいたことがないと思ったら日本では劇場未公開だったようです。
で、これを選んだきっかけは上で触れた著名人からの追悼コメントの中にこれを見つけたからです。
The only time I met Robin Williams, I got to tell him how much I loved 'World's Greatest Dad'. Do see that one. One of his many great roles.
— edgarwright (@edgarwright) 2014, 8月 11
信頼できる男エドガー・ライトからのご推薦とあらば観ないわけにはいかないでしょう。
そしてこの映画、彼が亡くなった今見るとけっこうズシンとくる内容でした。それは後述するとしてまずはあらすじから。
ビッグショット・ダディ (字幕版) (プレビュー) - YouTube
お話は、小説家を目指して執筆を重ねるも日の目を見ない高校教師ランス(ロビン・ウィリアムズ)が、実の息子で彼の勤務する高校の生徒でもあるカイル(ダリル・サバラ)の死をきっかけに、それまでのうだつのあがらない毎日から変わっていく…というもので、これだけ読むとありがちな感動物語と思うのですが、まったくそうではありません。
むしろ真逆のすっごくイジワルな話なんです。
全ては息子の死から始まるのですが、この息子がとにかく性格の悪いガキで常に悪態をついては周りの生徒から嫌われまくっており学校では孤立状態。家に帰ればPCでゲームするかオナニーするかしかやることがないダメ人間。
その死に方はオナニー中に快感を高めようと首をつっていたら間違って死んでしまったという、渡辺淳一先生ばりのアイルケ事故という情けなさ。
しかし息子がそんな死に方をしたと知られたくないランスは事故を自殺に見せかけて、勢い遺書まで捏造するのですが、この遺書が校内で多くの生徒からの共感を得てしまったことで一気にカイルは校内の英雄として崇められることに…ということでこの映画は基本的にコメディなんです。そしてその背後にはとてつもない皮肉が込められています。
クライマックスですべてがひっくり返される瞬間にその皮肉が爆発して、普通に観ていたのなら、その痛快な逆転劇に親指立てるところなんですが、ロビン・ウィリアムズが亡くなった今となっては、ちょっと違う感慨を覚えてしまいます。
それは劇中で彼が言うある印象的なセリフがあるからにほかなりません。
息子を自殺でなくした(ことになっている)彼は、悩める若者に向けてこういうのです。
絶望する前に誰かを頼りなさい。自殺は一時的な問題の永久的な解決策です。
(If you are that depressed, reach out to someone. Suicide is a permanent solution to a temporary problem.)
これを自殺という形で生涯を終えた彼の口から聞くと、それ自体がなんとも皮肉というか、彼こそ誰かに頼れなかったものかと非常に残念でなりません。
いずれにせよ、そのことで今作の価値が毀損されるなんてことは全くなく、それどころかもっと彼の作品を観てみたいとすら思いました。
幸か不幸か、ぼくはまだ彼の出演作で観ていないものが割りとあるので、ちょこちょこチェックしていこうかと思っています。
Robin Williams, you'll be missed.
- 作者: ロビン・ウィリアムズ
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- 発売日: 2012/03/07
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