トランスフォーマー/The Greatest Movie Ever Sold
8月8日ついにトランスフォーマーシリーズ最新作『トランスフォーマー/ロストエイジ』が日本公開となるわけですが、映画評論家の町山智浩さんがラジオの中で話していたことが面白かったのでちょっとご紹介。
話の序盤は、このシリーズ最新作となる『ロストエイジ』の興行収入がアメリカよりも中国の方が大きかったということで、現在のハリウッド映画はどんどん中国のマーケットを意識して作られていると言うような話でした。
まあこの辺りは80年代後半から90年代初頭にかけてやたらと日本が舞台だったり、日本に目配せしたハリウッド映画が多かったことと同じことが中国で起きているというだけで、要はカネを出すところで映画を作るというハリウッドの商魂のたくましさが今も健在だということで、もっと興味深かった話は後半、『ロストエイジ』が世界公開の前にすでに160億円ほどの収入があったという事実から始まりました。
この収入はすべて広告収入から得られたもので、『ロストエイジ』はその見返りに映画本編の中でスポンサー企業の商品をガンガン露出させていると言うのです。
これはプロダクト・プレイスメントと言って別に今に始まったことではなく、製作費を捻出するために以前から行われていたことではあるのですが、なんせその額と商品の見せ方が凄いんです。
例えば、映画はまずテキサスで主人公がオプティマスを引き取るところから始まります。当然舞台はアメリカ・テキサス。なのに劇中、主人公がATMでお金をおろすために使うカードにはデカデカと中国の銀行名が…。これはこの銀行が金を出しているから。
他にもトランスフォーマーが戦闘しているその最中にとある人物がバドライトを美味そうに飲んでみたり、命からがら辿り着いたビルの屋上になぜか冷蔵庫が置いてあって、開けるとそこには牛乳の紙パック(中国メーカーのもの)。で、もちろんそれを美味そうに飲むシーン。
飲んでる場合か!
とツッコミたくもなりますが、全てはスポンサーへの配慮なわけです。
ここまで来ると観客は映画を見ているのか、壮大な商品広告を見ているのかわからなくなります。
で、この話を聞いて思い出した映画が。
それは『POM Wonderful Presents: The Greatest Movie Ever Sold』というドキュメンタリー映画で、監督は『スーパーサイズ・ミー』で日本でも知られているモーガン・スパーロック。
POM Wonderful Presents: The Greatest Movie Ever ...
予告編を見てもらえば分かるのですが、この映画はプロダクト・プレイスメントについての映画を全てプロダクト・プレイスメントで得た資金で作るというメタ構造になっています。
要は堂々と「企業からカネを出してもらって映画を作るぜ!」と宣言して映画を作っているわけです。なので映画のタイトルにはスポンサーであるざくろジュースの会社POM Wonderfulの名前が入っています。
言うまでもなくこの映画はプロダクト・プレイスメントによる映画作りを皮肉っており、その語り口がとても愉快なのですが、同時に企業からカネを出してもらうと「あれをするな」だの「もっと商品を目立たせろ」だのと映画の本筋よりも企業の論理が優先してろくなことにならないという実態が浮き彫りになって、なんだか暗澹たる気分にもなります。
そしてその行き着く先が『トランスフォーマー/ロストエイジ』なわけですよ!
別にプロダクト・プレイスメントの手法が悪いと言いたいわけではなくて、なんならそれによって得られたお金でおもしろいものが作れるのならガンガンやったらいいと思うくらいなんですが、いかんせんトランスフォーマーですからねぇ。この映画がこんなに売れてるのがなんか腑に落ちない。
でも何より腑に落ちないのはおもしろくないってわかっててそれでも見に行く気マンマンな自分に対してですね。
だってベイヘムを味わうならデカイスクリーンに大音量が一番なんだもん!
映画『トランスフォーマー/ロストエイジ』予告編 - YouTube