『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』を読みました。
7月10日です。参議院選挙の投票日ですね。
僕も朝イチで近所の投票所に行ってきました。よく晴れた空に太陽が眩しかったですが、昨夜の雨の影響で風は涼しくとてもすがすがしい気持ちで投票できました。
結果がどのようになるかはわかりません。希望の候補者が当選すればそりゃ喜ばしいですが、たとえそうでなくても、今朝のように誰に強要されることも監視されることもなく自分の意思を一票に込めて投ずることのできる社会があることがとても幸福なことだとそう思いながら帰り道を歩いていました。
各々意見の違いはあっても、この権利と環境を守ることについてだけは国民の総意として守り続けたいですね。
さて、久しぶりに高カロリーな本を読みました。
管賀江留郎(かんがえるろう)という人を食ったような名前の著者による『道徳感情はなぜ人を誤らせるのか』という本です。なんせ500ページを超える束の厚い本ですからね、買ったはいいものの着手するまでに少し時間がかかりました。
ただ、読み始めたらもう夢中で読みましたけどね。
話は第二次世界大戦の最中に静岡県の浜松市で起きた連続殺人事件、通称【浜松事件】から始まります。いかにしてこの残虐極まりない事件の犯人を逮捕するに至ったか、その経緯と捜査に携わった関係者の人となりを端緒としてわれわれは徐々に本書の本題へと足を踏み入れていくことになります。
タイトルだけで判断するといかにも人文系の小難しい形而上論議が炸裂する内容かと思われそうですが、初めの数章は特に物語性が強く、登場人物のキャラも立っていてグイグイ読めると思います。
その中でも特に重要な人物が静岡県警察の刑事である紅林麻雄その人です。
簡単に説明すると、この紅林刑事は【浜松事件】を解決して”しまった”ためにその後多くの冤罪事件を引き起こすことになるのです。
現在劇場で絶賛公開中の映画に『日本で一番悪い奴ら』という作品があります。
これは北海道警で実際に起きた【稲葉事件】という警察の不祥事を題材にした映画です。この事件が発覚したのは2002年のことなのですが、この映画を観ていると綾野剛さんが演じた主役の諸星や北海道警全体が、本書で描かれる紅林刑事および静岡県警と見事な相似形を描いていることに気が付きます。
これは警察という組織が戦後数十年にわたり変わらず抱えている体質が理由ともいえますし、究極的には人間というものが社会的な営みを始めた時から変わらず行動指針としているものが深く影響しています。
それが著者の指摘する道徳感情なのです。
と、こんな前置きで少しでも興味を惹ければよいのですが。
ここから先は本書をご覧いただければ幸いです。