いいわけ

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「それはいいわけだ。芸人は芸だけでは気が済まないんだよ。言い訳がしたいんだよ。言い訳したいから話すんだよ。話すだけではおさまらないから記すんだよ。そんなことは自分が欲するからやってんだ。自分が好きでやってることでなんで人の評判を気にかけんだ。自分のことは自分で認めてやればいいんだ。芸人なんて自分の好みになるのが一番いいんだ」



立川談志さんの死去に伴い水道橋博士がラジオ番組「キラキラ」の中で語ったエピソード。これにグッときた。


1995年、浅草橋ヤング洋品店内のコーナー「江頭グランブルー」
水道橋博士はこのコーナーのゲストに立川談志さんが出演した際に初めて会話をした。
博士の師匠であるビートたけしの師匠というとてつもない存在の談志さんを前に緊張を隠せない博士だったが、ロケの待ち時間にその談志さんから「話をしよう」と提案された。
当時、東京かわら版という寄席の専門誌上で漫才論を語る連載を持っていた博士は、


「演者である自分が評論家づらして語ることに忸怩たる思いがあった」


という気持ちを素直に談志さんに打ち明けた。
すると談志さんは冒頭の言葉で博士の背中を押したのだった。


少なくない表現者にとって定番のジレンマと、それに対する定番の答え。
なのだけれど話を聴きながら胸の辺りに熱いものを感じた。
なんでだろうと考えたら、それってやっぱ博士の語り口が大きいと思った次第。
人は内容そのものではなくその伝えられかた自体に共鳴するんですね。
最後は博士ちょっと涙声みたいに聞こえたし。


リンクは実際の音声。
文面じゃ伝わらないものをぜひ。
水道橋博士ペラペラ



談志さんの件の裏にこんなことがあったとは。
江頭グランブルーの回は男泣き必至の名著。

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