その土曜日、走行30キロ
厳しくなった冷え込みに空は青く綺麗に映えるけれども、目線を下げれば色あせた芝生や禿げた木々がなおさら寒さを助長している。
こんな日はどうも外へ出るのが億劫に感じられるけれど、意を決して飛び出せば意外と平気なものだ。
それでも今日はいつもの格好に一枚ジャケットをオン。ああ、冬のランが始まった。
予定した時間より1時間遅く出発したのはそのぶんだけ寒さで布団から出られなかったから。
それでも走る時間は削りはしない。こちらは予定通り30キロを決行する。
スタートから数キロはあまりペースをあげていなくても軽く息が上がる感覚がある。
ある程度はいつものことだけれど、なんだか今日は少し苦しさの度合いが大きいかも。
少しだけ弱気になるけれどやがて体が馴染んできた。どれだけ自分の体に敏感になっても同じ不安は尽きないものだ。
5キロ地点での折り返し。特に時計は意識していないけれど早くもなく遅くもなくのいいペース。
一度部屋まで戻ってエナジーと水分の補給。暑くなってきたのでジャケットも脱ぐ。
でもすぐに後悔した。途端に寒くなった。
戻ろうかどうしようか、少し悩んだけれどこのままいく。どうせ暑くなるさ。
第二ユニットは最近開発した新コース。往復14キロ。
途中に三叉路ならぬ六叉路の大きな交差点があってここがどうしてもネックになるのだけれど、最近は歩道橋を使っている。
でも、これが結構キツイんだ。特に登りはハムストリングに効く。いいトレーニングだと割り切ればこれも楽しい障害物。
どんどん田園地帯に入っていくと道の脇には「うみたてたまご」の自販機や野菜の売店も。
東京は広いとここを通る度に思う。
そして第二ユニットを折り返したらあとは帰るだけ。
でも、途中で井の頭公園を4周(約6キロ)する。これをしないと30キロにはならない。
久しぶりに休日の公園へ。
思ったほど人がいないのは寒いからだろう。それでも似顔絵描きや自作の小物売りが露店を構えて客をまっている。
僕はその前を4回通るわけだが、一度もお客のいた気配がない。
でもきっとそれでいいのだろう。穏やかな土曜の昼をあの場所で過ごす、それが何より楽しいのだろうから。
周回を重ねるごとにフラフラになる脚を何とか前へとおくりだして、このステージを終える。
しかし一番の壁は公園から吉祥寺通りに出るための坂道だ。
もうとにかく急勾配。距離は全くないけれど勾配のきつさが尋常じゃない。思わず嗚咽をもらしそう。
でもここを超えてあとはゴールまで約2キロ。
住宅街の細い道を抜けて、最後のストレート。
もう1キロほどしかないっていうのに、この道のりが永遠に続きそうな気さえする。
でもでも歩を止めなければゴールは必ずやってくる。
そしてゴール!
こうして僕の日常は続いていく。
走行データ。
距離:30キロ
時間:2時間35分19秒
平均ペース:5分10秒/キロ