The Cove

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映画 「ザ・コーヴ」 09年 米
監督:ルイ・シホヨス
出演:リック・オバリー他


実際に見に行く前までは大多数の物言いと同じく「プロパガンダの最たるもの。日本の文化なんやからとやかく言われてもね」なんてことを思っていました。
そして実際に見てみての感想。


「メッセージはともかく映画としてはかなりおもしろい」


ドキュメンタリーという体で見ると欠陥が多すぎるしやはり思想の面でツッコミどころが多くてノイズが発生しますが、封鎖された入り江(コーヴ)でなにが起きているのかを撮影するためにスペシャリスト達を集めてチームを組織、周到な準備の末に計画を実行、というシークエンスは劇中で監督自らが言っていたようにさながらオーシャンズ11のようで単純にクライムアクションを見ているかのような印象。
起承転結もはっきりしていて1本の映画としては飽きることなく最後まで堪能することができました。


初めに抱いていた印象に対するリアクションとしては、まずプロパガンダ映画というレッテルは見れば完全になくなります。
主張が一方的で反対意見の人間はみな悪人という描き方はプロパガンダそのものですが、主要人物であるリック・オバリーの言動があまりにアレすぎてまともな考えのできる方であればこの映画自体が本気で受け止めるに値しないものであることは明白。
さらに撮影や編集の過程でねつ造や恣意的なものがあるというドキュメンタリーとしての体をなさない状況ということを知ってさらにこの映画の残念さが増しました。
詳しくはwikiで。
ただこの映画によって我々日本人が意識を変えるべきことがあることが分かったこともまた事実。
それはイルカ漁や捕鯨に関して「日本の伝統」という言葉を考えもなく反射神経のように使っているということ。
劇中で銀座にいる人にもインタビューがされていましたが、実際に和歌山の太地でイルカ漁が伝統的に行われていることを知っていた人がどのくらいいます?
少なくとも僕は今回の話題が盛り上がったことで知りました。
冷静に振り返ると世界で日本のことを誹られたりするとこのようなインスタント国家主義に陥ることって少なくないと思うんですよね。
それこそ世論の「空気」で知りもしない「文化」や「伝統」を振りかざしてアイデンティティを堅持するみたいな。
そんな自分を合わせ鏡のように映して分からせてくれたという点においてはこの映画を見る価値があったと思います。
でも「コーヴってどんな映画?」と聞かれれば迷わずこう答えます。
「イルカがかわいくて仕方ない人たちが声を上げたから太地町が狙われたけど、他の動物がかわいくて仕方ない人たちが声を上げたらどこかの国のどこかの人たちが攻撃されてただけ。人って結局自分勝手なんだよってことをわからせてくれる映画だよ」


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