Be Kind Rewindは00年代のNew Cinema Paradise

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これくらい大上段に構えたって問題ない。
映画「Be Kind Rewind」邦題:僕らのミライへ逆回転
監督:ミシェル・ゴンドリー
主演:モス・デフ
   ジャック・ブラック


公式サイト


もちろん”あの”ジャック・ブラックが出ているわけだから笑えないわけがないわけで、それゆえに「ニュー・シネマ・パラダイス」と並列にこの映画を語ることを許さない人もいるかもしれない。が、しかしこの両作品に通底するものは確かにあって、それはつまり「映画って本当に素晴らしいですね」という最高に凡庸で最高に崇高なテーマだ。
ニュー・シネマ・パラダイス」においてそれは郷愁という甘美なコーティングを施されて見るものの心を絞り上げた。そして今作においてそれはくだらなさ過ぎる笑いの強襲として見るものの心を開放する。
その昔映画は一番の大衆娯楽だった。
ニュー・シネマ・パラダイス」の中で映画技師のアルフレードが映画を上映している教会の外で入場できずに怒号を上げる人々のために上映中の映画を向いの家の壁に映してやる場面があるが、あのときの人々の熱狂たるや今では考えられないものだ。それほど人々は映画を欲し、映画を愛していた。しかし時代が進むにつれて映画は娯楽の王様としての位置を失っていく。それにともなって映画は閉鎖的になっていく。流行の映画もすぐにビデオやDVDでレンタルされる時代だ。わざわざ劇場で見なくてもいいか、という心情が映画から輝きを失わせた。
この映画はそんな現代(といっても劇中のレンタルショップは今時VHSしか置いていないが)にもう一度映画の輝きを取り戻す。その方法がswedingスウェーデンする)だ。
Swedingとは簡単にいえばリメイクになるわけだが、劇中でモス・デフとジャックが織り成すそのSwedingがもう半端なく面白い。
ゴースト・バスターズにラッシュ・アワー。果ては2001年宇宙の旅だ!
この映画の肝はまさにここにあって、映画が盛者必衰の理に即して移ろいできた現代において再び原点回帰、つまり自分たちで作っちまえばいいんだよという痛快な発想に行き着いたのだ。
これから見る人もいるだろうから明確には言わないが、この映画の中である映画を見ている人達の顔は「ニュー・シネマ・パラダイス」の中にでてくるそれと一緒なんだよ。映画をみてドキドキワクワクしてる時のあの顔は本当に美しいんだ。
ラストシーンでまさか自分もそんな顔になってるんだから参ったね。