who's gonna win finally?
先般開かれた日朝実務者協議を受けて日本政府は北朝鮮へ課していた制裁を一部解除する考えを示した。
その中身は人的往来の規制解除、北朝鮮からの航空チャーター便の乗り入れ規制解除、民間の人道支援物資を日本で積み込む場合に限り北朝鮮籍の船の入港禁止を解除(人の乗降は認めない)になるそうだ。
まあ何と言うか拙速だと感じざるを得ない決定だと思う。
今回の協議で北朝鮮側が示した態度は向こうが解決済みと勝手に決めていた拉致問題の再調査を行うということと、よど号ハイジャック犯の引渡しへの協力要請である。
拉致問題に関しては、被害者家族会の方々も口を揃えておっしゃっているが、再調査を行うなんて甘言は北朝鮮が拉致の事実を認めて以降既に何度だって言われていることなのである。そしてその度に我々は見事に彼らによって煮え湯を飲まされてきたではないか。一度など、拉致被害者である横田めぐみさんは亡くなったと報告し偽の遺骨まで用意するという下劣極まりない蛮行すら犯しているのだ。それを今更再調査を行うという姿勢を示しただけで評価するというのは如何なものだろうか。まずは彼らがどのくらい本気で再調査に取り組むかを精査しなければ評価などできるはずもない。
そしてよど号ハイジャック犯についてだが、これに関しては北朝鮮側の思惑が明け透けになっている。彼らはただアメリカからかけられたテロ支援国家の看板を外したいだけなのだ。李明博氏が大統領になってから途絶えた韓国からの援助なしにして現在の北朝鮮は立ち行かなくなっており、そのために彼らは新たな資金源を求めている。それは海外からの投資になるのだがそれを受けるにはアメリカのテロ支援国家指定解除が絶対条件になってくる。そしてその際にネックになるのが北朝鮮がかくまっているよど号ハイジャック犯の存在なのだ。アメリカが北朝鮮をテロ支援国家だとする根拠によど号ハイジャック犯がある限り北朝鮮は彼らに日本へ帰ってもらうしかない。しかしだからといって北朝鮮は簡単に彼らを日本へ返せるわけではない。何故か?そこには北朝鮮の前国家主席である故・金日成氏の”お言葉”があるからだ。よど号犯が北朝鮮へ渡った当時、彼は犯人達を金の卵だとして丁重にもてなすように指示したのである。トップの発言が絶対であり、またメンツを重んじる国である限り北朝鮮はこの命令を覆すことができない。であるから今回彼らは日本によど号犯の引渡し”協力”を要請してきたのである。つまり彼らの思惑としては、犯人引渡しは本意ではないが日本からの要請に協力する形で仕方なく受け入れます、ということになる。こんな形だけのメンツを保持するがために練られた理論などバカらしくて仕方がないが、しかしこれが外交ってやつなのだろうな。
結局、今回の日朝協議で北朝鮮側が一番果たしたいことは日本との関係修復ではなくむしろアメリカとの関係改善なのだ。拉致問題は悲しいがそのためのオマケでしかないだろう。しかし福田政権はそんな提案に一定の評価を与えてしまったのだ。つくづく日本の外交下手が嫌になる。そもそも拉致問題はあちら側の勝手な理論で行われた犯罪なのだ。それを外交の具にされてはたまったものではない。今回の協議はアメリカと北朝鮮の間におそらく存在するであろう利権のためにみすみす日本が利用されているようにしか思えないし、それを知った上での今回の判断だったようにも思う。内政ではいつまでたっても功績をあげられない福田首相の必死の外交政策だったのだろうが、今回も見事に失敗に終わってしまった。
そうして泣きを見るのが結局正義を信じる人々(特に拉致被害者の方々)であっては絶対にいけないと思う。