約束はいつも霧の中
気になるニュースがひとつ。
山口県岩国市の出直し市長選について。
現職である井原勝介市長がその職を辞したのが昨年の末。理由は米軍厚木基地からの空母艦載機受け入れの是非をめぐってだ。
受け入れ反対派の井原市長と容認派が多数を占める市議会の間の紛糾を収拾すべく広く市民に民意を問うのがこの市長選の主意である。
もともと米軍基地の町である岩国市において井原市長が米軍の空母艦載機の受け入れを拒んだのには理由がある。
米軍機の数がいまの2倍になり、住民生活に深刻な影響を与える懸念があるということ。
そして05年秋の日米両政府による在日米軍再編計画によって決まったこの米軍機移転が当該地区である岩国市の意向を無視したものであるということだ。
市民の意思はかねてから受け入れ反対が多数をしめていた。岩国市合併前の一昨年3月の住民投票では、「移転反対」が多数を占めた。その後の合併に伴う新市の市長選でも、「移転撤回」を公約に掲げる井原氏が移転容認派を抑えて当選した。
ここまで民意がはっきりしているにも関わらず政府は自分達の都合を優先させた。
と、ここまで概要を書き連ねたが、私が気になっているのは実は別の問題だ。
実は政府は移転に反対する岩国市に対して新市庁舎建設への07年度分の補助金35億円を打ち切った。
もともと新市庁舎への補助金は、米軍普天間飛行場の空中給油機を受け入れることを97年に決めた見返りだった。艦載機とは無関係のものである。
つまり政府は補助金の名目を一方的に捻じ曲げて市政の圧迫に取り掛かったのだ。
政府はこんな脅迫的なやり方で果たされた移転がうまく機能するとでも思っているのだろうか?
地方の疲弊は抜き差しならないところまで来ている。そしてそれは某政権の掲げた改革とやらの弊害だ。
そこにきてさらに傷口に塩を塗るようなことをしてどうするのだろう?
さらに言えば仮に井原氏が選挙に勝って再び市長になっても、政府が艦載機の移転を強行すれば、それを阻止する権限はないのだそうだ。
これではいつまでたっても地方は国のいいなりだ。
地方分権で日本を立て直すのであればこんな現状が許されるはずがないだろう。
政府には早く旧来の考え方を改めてもらいたい。