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The Strokes - Angles

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ミレニアム、新千年紀の始まりに沸いた2000年から始まったゼロ年代
当時の音楽シーンは90年代の総決算にして全否定とも言えるエミネムの登場が象徴するようにヒップホップ、またはラップミュージックが完全にポップミュージックとして機能することを証明し、この偉大な発見に誰もが食いついた。
ロックミュージックにもこの音楽は大きな影響を及ぼし、90年代の終わりからゼロ年代の始まりはkorn, Limp Bizkit, Linkin Parkを筆頭にハードなサウンドにメロディアスなコーラスそしてラップが加わったミクスチャー、またはネオメタルと呼ばれる音楽を鳴らすバンドが次々とチャートを席巻していった。
男の子達のパンツはどんどん太く低くなっていき、New Eraキャップのツバは軒並み後ろに向けられた。
アメリカを起点にしたこのムーブメントはブリットポップの狂騒に疲弊しきっていたイギリスにも伝播。それと同時にこれらの高カロリーな音楽に嫌気が差したのか彼の地ではTravis, Starsailor, Coldplayなど繊細で感傷的な歌を聴かせるバンド達もどんどん人気を増しており、ある種、両極端な構図がシーンを形成していた。
そんな状況が頂点を極めていた2001年、クシャクシャの頭にヨレヨレのシャツ、ボロボロのコンバースを履いた男達は前述したバンドのどれとも似ていないヘロヘロ、スカスカの音でふらりと現れた。まったく流行に乗れていないThe Modern Ageの登場だった。



彼らが"Is this it"で巻き起こしたロックンロール・リバイバルはそれまでにあったあらゆる音楽的ムーブメントよりも売り上げの規模は小さかったもののゼロ年代のロックミュージックに与えた影響は計り知れず、その後はアメリカ・イギリスのみならずヨーロッパ各地で次々と個性的なバンドが出現する素地となった。


彼らもその後2003年に2nd "Room on Fire"を2006年には3rd "First Impressions of Earth"を発表するなど精力的に活動していた。
しかし気がつけばバンドとしての活動は目立たなくなり、メンバーそれぞれが独自の活動を展開するようになっていった。
The Strokesはこのまま終わっていくのだろうか、そんな周囲の不安を吹き飛ばすようにゼロ年代を不格好に塗りつぶしたデビューから10年経った2011年、2010年代の始まりにまたしても彼らは新たな衝撃と共にふらりと現れたのだ。今回は少しだけヘアスタイルを整えて。



正直に言って、僕はIs this itが生涯ベスト級に大好きで、それに対して2枚目、3枚目に同じように入れ込むことは出来なかった。願っても無理とは知りつつも新作が出る度1stアルバムの焼き直しのような作品を望んでいた。
2ndアルバムの「ルーム・オン・ファイヤ−」は随所にIs this itの面影を残してはいるものの、どうにかそこから離れた場所を目指そうとする意図も見え隠れしておりやや消化不良な感じは否めなかったし、3rdアルバムに至ってはサウンド・プロダクションにはっきりと新しさを獲得したものの音楽そのものにはやや新鮮味が欠けていた。
聴く側の姿勢にも問題はあっただろう。いつまでも「あの」衝撃を引きずったままでは彼らの「いま」にはいつまでも追いつけなかったからだ。
しかし、そんな聞く側の気遣いなんて野暮なことはみじんも必要もなかったのだ。
彼らの最新AL "ANGLES"は彼らが1stで作った偉大な道の上空遥か先を今までにない自由度でビュンビュン飛び回っている。
作品の制作過程における変化が大きく影響していることは間違いなさそうだ。
これまでVo.のジュリアンが中心となって作り上げられていた楽曲を今回は彼抜きで他のメンバーが構築していったと聞く。
特にリードギターのニックはデビュー当時のただのメチャクチャ男前なギタリストからバンドの求心力として絶大な存在感を持つメチャクチャ男前なギタリストへと変貌を遂げたようだ。
この"ANGLES"では彼らの発明でもあるダンスミュージック的repetitionとウォール・オブ・サウンドの複合体としてのギター・サウンドは顔をだしているが、それだけにとどまらず、The Storkesマナーとしては御法度であったシンセを導入した"Games"や、ジュリアンのコーラスワークが聴ける"Gratisfaction"など新しそうで新しくない少し新しいThe Strokesが10曲35分というこれまたベストな尺で暴れ回っている。
ゼロ年代にきっちり落とし前をつけて、次の10年の始まりを高らかに歌い上げた今作は間違いなく彼らにとってThis is itな作品なのだ。


アングルズ

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