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レキシ - レキツ

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100sのキーボディスト・池田貴史によるプロジェクト「レキシ」による2ndアルバム”レキツ”
彼のバイオグラフには当然Super Butter Dogという輝かしい経歴が付随するわけだが、このレキシはそのバタードッグ的な趣を感じやすい。それも音楽的なファンクネスにではなく彼らが持っていたユーモアセンスにだ。
まずこのプロジェクトのコンセプトからして面白い。歌われる内容はとにかく日本史にまつわることばかり。これは池田自身の歴史好きが反映されているわけだが、誰でも1度は聴いたことがあるであろう歴史上の人物や事件が記号的な引用で終わることなく、それこそ”わび”と”さび”を兼ね備えた物語として、または授業では絶対に得られない笑える視点から歌われる。


1曲目は客演にMC末裔とMC四天王を迎えた「そうだレキシーランドへ行こう」
ディ○ニーのなんとかパレードのファンファーレから二人のMC(まあスチャのANIとBOSEね)による、今作のコンセプト紹介のようなリリックが冴え渡る。
千利休ティーパーティ”とか”パイレーツオブ玄界灘”などパンチライン多数。特にMC四天王パートはほんと良くできてる。


2曲目はDeyonna a.k.a. 椎名林檎と「きらきら武士」
侍に恋した、駆け落ち希望の姫様というのが林檎のキャラにピッタリ。
普段から文語体や旧仮名遣いを駆使するだけに違和感がないと思っていたら歌詞は全てレキシ本人によるもの。こりゃすごい。


3曲目は謎の歌い手シャカッチと共にButter Dogを想起させるディスコ・ファンクな「ペリーダンシング」
冒頭の台詞がじゃっかん宮崎吐夢を彷彿とさせるけれど、そこはまあご愛敬。
ペリーの来訪で眠れないことをディスコで朝まで踊り明かして眠れないことに繋ぐという驚天動地の発想。
”たった 四はいで 眠れぬ トゥナイト”うまいねぇ。


4曲目は織田信ナニ?ことSAKEROCKハマケンがコーラス・トロンボーンで参加のメロウなナンバー「どげんか遷都物語」
平城京に残った男が平安京に移り住んだあの子を想う切ない恋心をテーマにしているのだが、これって要は現代にだって充分通じる普遍的な話。それに、実際そんな風に引き裂かれた恋人がいたんだろうという視点で振り返ると、無機質な歴史がとても華やぐではないか。
メールなんてできない彼が送るのは和歌。あぁ、切ない。


5曲目は安藤裕子聖徳太子ならぬ聖徳ふとこ、として参加した「ほととぎす」
これ、曲調と安藤裕子の歌声だけ聞くとどんな必殺バラードだと思わざるを得ないのだが、歌詞をよく聴けば歌われていることは鳴くまで待たれているほととぎすについてでしかないというユーモアとポップネスの混在具合が今作の中でも特に素晴らしい曲。ヤバイ。


6曲目はMC母上 a.k.a. Mummy-Dと共に曲名通りのタンゴ調「かくれキリシタンゴ 〜Believe〜」
南蛮文化到来ということで舶来の音楽を。
禁じられたキリストへの信仰、宗教への依存というのは、そっくりそのまま許されない恋にも通じるわけで、物事のエッセンスを汲み取って綴られるリリックはさすがのDさん印。
踏み絵とか久々に聞く言葉の「そんなのあったなぁ!」感は授業に出たからこそ得られる素敵な財産。


7曲目は小休憩のゆるやかなダブ「レキシ ト ア・ソ・ボ」
あーのーこーがーほーしーい。あーのーこーじゃーわーかーらーん。


8曲目はマウス小僧JIROKICHIこと堂島孝平の参加でポップさが爆発した「妹子なぅ」
ゴダイゴは銀河を目指して旅立ったけれど、こちらの目的地は随。それも彼は船に乗ってから行き先を知る。そして小野妹子が男だったことも船上で知る(笑)法隆寺はこの頃に出来たということが学べるということで文科省も推薦間違いなし。いっそのこと合唱コンクールの課題曲にしちゃえよ!Don't look back飛鳥!!


9曲目はグローバー義和(Jackson Vibe)が東インド貿易会社マンでコーラス、いとうせいこう足軽先生でラップする「狩りから稲作へ」
めちゃくちゃいい曲が縄文から弥生への文化移行について歌われているだけという奇跡。
コールアンドレスポンスが「稲作中心 ヘーイ 稲作中心 ホー」て(笑)あ、これこそ日本にしか出来ないヒップホップの形だ!せいこうさんがまたしてもやってくれた!


ラスト10曲目は牧歌的に鍵盤とパーカッションだけで演奏される小品「歴史と遊ぼう」
無理に覚えようとしたり、詰め込もうなんてしなくていいんだよという、このアルバムに流れていたテーマをおさらいする可愛い曲。


ということで全曲紹介してしまったが、それも全てこの作品の魅力がなせる業。
邦楽を讃える言葉として、日本に生まれて良かったと思える云々というのがあるが、この作品こそまさにその栄誉を授かるに相応しいのではないか。
ジェネレーター使って機械的に作ってるような錯覚すら覚える、意味ありげで特に意味なんてない最近の歌詞に比べると、こちらは本当に歌ってることに意味なんてない。けれど、そこに精緻に組み上げられたユーモアがあり、それが脳に与える恍惚感は凄まじい。
小難しい話になってしまったが、今作は落第生から優等生まで誰でも楽しめるテーマパーク。
気楽に聴いてみて欲しい。


レキツ (DVD付)

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