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Under Our Skin

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映画「アンダー・ザ・スキン 〜ライム病との戦い〜」 07年 米
監督:Zahava Wilson


1980年代から密かに蔓延し、疫病と呼ぶ者もあるライム病。ティックというダニの一種に噛まれることにより体内にバクテリアが入り込み、感染、発病する。
死に至ることもあるこの病が世間でほとんど知られていないその理由には、政治的な問題が大きくからんでいた。
from 松島・町山 未公開映画際HP

人は知っているものをのみ存在するものとして認識する。
その事実に照らせばこのライム病といういささか厄介な病気はここ日本においては存在しないも同然だ。
しかし不思議なことにこの病気アメリカでは苦しんでいる人がどれだけ訴えても、存在しないものとして片付けられてしまう。
患者達が訴える原因・症状はライム病を規定したガイドラインに沿わないからだ。
そこで医者は彼らのルールの中に存在しない病気をでっちあげる患者達を精神病のごとく扱うようになる。
これは酷い。
しかしもっと酷いのはそれにより患者達が早期に適切な治療を受けられず重大な障害を抱えてしまうことだ。
一体どうしてこのような事態が巻き起こってしまうのか。
それはライム病を規定したガイドラインの中身、そしてその成り立ちそのものに大きな瑕疵があるからだ。
マイケル・ムーアの「シッコ」のおかげで日本でも結構有名な事実だが、アメリカでは治療の権限を保険屋が握っている。
となれば当然、彼らは保険料の負担を抑えるべく治療の機会を抑えようとする。
そこで登場するのが病気の定義を決めるボードメンバーなのだが、彼らのほとんどが保険屋からなにかしらの利益供与を受けている。
あとの展開はまあ想像の通り。
もうこの未公開映画群で嫌というほど学んだことだ。人の生き死にに関わること、必要最低限の生活を担保するものを金儲けの道具にしてはいけないのだ。
ガイドラインの改定を誰の目にも明らかな形で実行するにはライム病の原因を科学的に証明するしかない。
劇中ではその証明に没頭するある医者が解決まであと少しというところまで迫るのだが、なんと最後にアルツハイマーになってしまうというオチが付く。
笑ってはいけないことなのだが、この結末はあまりに残酷過ぎてもう笑うしかない。