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ピンチはチャンス?

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それは約1週間前に長きにわたる海外出張から帰ってきて乗り換えの成田空港でiPadを開いたときだった。
3G回線に繋がらない…。
画面の左上にはしっかりSoftbankの文字が。電波も良好だ。しかし肝心の3Gの文字だけは待てど暮らせど現れない。
それまでに渡り歩いた述べ5カ国ではなんの問題もなく使えていたのに、自分の国に帰って来た途端に使えなくなるなんて。
長旅の疲れもあり少し苛ついたがとにかく明日の朝にでもカスタマーサービスへ電話しよう。
その日はそうして帰途についた。


翌朝、早速Softbankへ電話するとオペレーターの女性が考えられる限りの手を尽くして回線を復活させようとしてくれた。
僕は設定画面を何度もチェックし、電源を切ったり入れたりを繰り返した。
それでもあの二文字が現れる気配はなかった。
オペレーターはおもむろに電話を保留にししばらくすると戻って来た。
「利用料金に関してお客様にお話しすることがございますのでそちらへお繋ぎします」
この時点で僕の頭には嫌な予感がよぎった。そしてそれは現実になった。


「海外でご利用になった通信料でお客様に17万円の請求がございます」
新しい担当者からそう言われたときは予感していたとは言えあまりの高額料金に思わず声が上ずった。
「いや、でもそちらの海外パケット定額を利用しているはずですよ?」
「海外でご利用されるされる際には弊社と提携している事業者を設定する必要があります」
この時点でトラブルの原因がハッキリした。


それはおよそ一月ほど前、某大手電化製品量販店にてiPadの契約をした時にさかのぼる。
そもそもiPadを購入しようとしたのはSoftbankが海外でのデータ通信定額サービスを始めるというアナウンスがあったからで、長期の海外出張が既に決まっていた僕はそれを購入の決めてとし、当然、契約時にはその海外パケット定額について誤解の無いように質問をした。
担当してくれた女性はそれまでの対応も作業の手つきも淀みなく、信頼するに足る人だと思った。
「この海外定額を利用するにはなにか申し込みなど必要ですか?」
「いえ、特に申し込みなどは必要なくて海外でご利用があった際に自動的に適応になります」
「でも海外で使うときにどの回線を使うとかはありますよね?それはどのように設定すればいいのですか?」
基本的に機械が自動的に選択しますので大丈夫ですよ」
これだ。


僕は落ち着いてこれまでの経緯を説明することに努めた。
電話口の女性も事態を理解するとかなり困ったような声で相づちを打つようになった。
「この件についてはなんとか請求額を抑えられるように対応させて頂きますので、しばらくお待ち頂けますでしょうか?」
こうして僕はおよそ1週間後に先方から来る通告を待つこととなった。


電話を切って大きく息を吐く。どうにもモヤモヤが残る。
こちらとしてはお店の人に言われたとおりにしただけなのにという疑問が拭えなかったからだ。
それなのに電話口からはその説明不足についての謝罪はなく、それがいまいちピンとこなかった。
そんな感情を抱えたまま僕はtwitterに今起きたことをこうつぶやいた。

iPad、帰国後に繋がらないのでサポートセンターに問い合わせると「海外の使用で料金が17万円請求されています」とのこと。は?海外パケット定額は?「台湾では手動で事業者の設定が必要となっていまして…」

これは本当におかしい。なぜなら俺は契約の際に海外では何か設定などいるのですか?と質問した際に、店員から「だいたい自動で検出されるもので大丈夫ですよ」と言われているのだ。そんなこと言われたら逆に手動で設定なんてするわけないだろ。

一応ソフトバンクの方で海外定額が適用できないか検討するとのことだが、まずはスタッフへの説明の徹底をするべき。少なくとも海外へ行く際はサポートセンターに問い合わせて行く地域での定額対象キャリアをご確認くださいとかさ。そうしたらこっちもそうするよ。


それから数時間後、事態は驚くべき展開を見せた。
ふとtwitterで自分宛に来ているメッセージをチェックしてみるとSoftbanktwitter上で展開しているカスタマーサポートアカウント@SBCareから反応が来ていたのだ。

失礼します、SBCareです。ツイートを拝見しました。担当者の説明不足により大変なご迷惑お掛けして、誠に申し訳ございません。詳細をお伺いして、個別に対応させて頂きたいので(続く)

(続き)下記URLのEメール窓口からtwitterIDを記載してメールを送って頂けますか?http://25rk6.tk お手数をお掛けしますが、よろしくお願い致します。


「クレームがあったときこそお客様を捕まえるチャンス。上手く対処できればお客様は今まで以上にお店を好きになってくれる」
このような旨の言葉を接客業務をしたことがある人なら一度は聞いたことがあるかと思う。
僕も何度も聞いてきた。そしてこの言葉の持つ意味がこのとき初めて理解できた。
大袈裟に言うとこの時点で僕は仮にあのアホみたいな請求が取り消されることなくそのまま請求されても、これ以上なにも言うまいとさえ思ったのだ。(もちろん実際にそうなったら結構抵抗すると思うw)
それほどこの予期せぬ対応は僕の中で引っかかっていたモヤモヤを綺麗に晴らしてくれたし、この問題は必ず良い方向に転がっていくぞ、という確信さえ僕に与えてくれたのだ。


結局、この一件は全ての利用日をパケット定額で利用したという計算で請求されるという僕にとっては一番最良の結末で幕を閉じた。
この一報の際も電話口からは契約時の説明不足についての謝罪は聞かれなかったし、むしろ次回からはお気を付けくださいとたしなめられるという「?」な展開すらあったのだが僕は気にしなかった。
それほどtwitterで@SBCareからもらった反応が嬉しかったのだ。


なぜそこまで心動かされたのか?
思うにそれはまず「驚き」に起因するところが大きい。
今回のことがあるまで僕はSoftbanktwitterでそんなサービスを展開していることなど知りもしなかった。
さらに自分から関係者(まあ社長ね)に直訴などしたわけでもなく、海の藻屑のようにやがて遠くに流されていってしまうであろうtweetをわざわざ沖からすくい上げて目の前に戻してくれたその行動に心底驚いた。


Sonfbankの持つ企業としてのダイナミズムや柔軟性に感心したことも理由の一つに挙げられるだろう。
twitterはただのウェブサービスを超えてそれ自体がインフラになりうる」という表現を耳にすることがある。
僕はその意見に関して鼻白むところが少なくないのだけれど、Softbankのやり方を見ているとむべなるかなと思わざるを得ない。
僕たち消費者・顧客は企業に対して質問や意見を述べるときにこれからはtwitterを選択肢の一つにできる。
そしてtwitterの凄いところはこの企業への発言が同時にその人を取り巻く友人・知人にも自動的に拡散されていくということだ。
企業にとっては大変な時代が来た。
しかし誰かの小さなつぶやきを”わざわざ”拾い上げては持ち帰ることで今まで以上に強く確かな繋がりを獲得することも可能なのだ。


僕はこの一件だけで世間で言われる様々な言説について認識を改めることになった。
そしてこれがその3つ目だ。
「ピンチはチャンス」


その通りである。