What Maisie Knew

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映画「メイジーの瞳」
監督:スコット・マクギー
   デヴィッド・シーゲル
主演:ジュリアン・ムーア



【物語の核心に触れる記述があります】


キッズ・オールライト』製作スタッフが送るという宣伝文句が気になって観に行ったのですが、これ監督とか脚本は特に『キッズ〜』には関連なくて文字通りプロデューサーが同じなんですね。


物語はケンカが絶えずついに離婚まで至った夫婦とその夫婦に振り回されるハメになった若い男女の様を夫婦の一人娘であるメイジーの視点から映していきます。
この映画、はっきり言って話が進むほどに親の身勝手さに腹がたつしそこに希望を思わせる結末を用意しているわけでもないので人によっては憤りとかやりきれなさだけを感じる結果になるでしょう。
言い換えればそれは観る側が実在しないメイジーに大いに同情し、彼女の幸せを本気で願うにまで至っているということで映画としては本当に良く出来ているということです。
特にメイジーの親が使う「愛してる」という言葉の空々しさが大変嫌な気分をこちらに残してくれます。
一般に人を惹きつける物語には、登場人物の成長が欠かせません。
しかしこの映画が突きつけるのは『人は変わらない』という厳しい現実です。
子供が出来ることで親としての自覚を獲得し真の意味での大人へと成長していく人もいます。しかしそうじゃない人も少なからずいるというのもまた事実で、子供ができれば全てが変わるという幻想を打ち砕いてくれるよい教材にもなっています。


同じ製作スタッフということで『キッズ・オールライト』とも通じるのは家族の多様性を描いているということ。
最も一般的な家族の形、男親と女親に彼らと生物学的に繋がっている子供がいるという当たり前の形にとらわれずとも子供を持ち育て愛することは可能なのだということがこの2作では提示されます。
『キッズ〜』ではレズビアンのカップルに二人の子供という4人家族が登場します。子どもたちはそれぞれに母親と血こそ繋がっていますが生物学的な父は不在です。
『メイジーの瞳』ではメイジーの実の父母といったんパートナーになったことで継父・継母として彼女に接した二人が、最終的には誰よりもメイジーを愛し、理解する存在となります。


今作の原題は『メイジーの知ったこと」
身勝手な両親の振る舞いを見てわずか6歳の女の子でもわかったのです。家族の形はひとつじゃないと。


(書ききれなかった感想)
・劇中でメイジーの着る服がどれも可愛かったな〜。部屋のインテリアとかも含めて衣装・美術スタッフのセンスは憧れすら感じた。
・最近『ザ・イースト』で観たばかりのアレキサンダー・スカルスガルドは初めこそ無責任で頼りない若者って感じだったのに段々信頼できる男になって、その変化が顔にも表れていてすごかった。上にこの映画では成長するところを見せないと書いたけれど、リンカーン(アレキサンダーの役名)だけは成長してるかもしれない。