そして父になる

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監督:是枝裕和
主演:福山雅治 尾野真千子 真木よう子 リリー・フランキー



予告編と話のおおまかな設定を聞いてすでに見たような気分でいたら思わぬしっぺ返しをくらった、とても気持ちのよいしっぺ返しだった。
取り違えられた二人の子供を育てた全く異質の環境、それを対比しながら普通なら交わることのない家庭が共に壁を越えていく過程を仮定の話で終わらせないリアリティで描いている。
でもこの映画にとってそれらの描写はオマケに過ぎない。なぜなら物語の肝は主人公である野々宮良多(福山雅治)の成長物語だから。
ありきたりなプロットのように、仕事ばかりで家族のことを顧みなかった男が最後にはファミリーパパになってめでたしなんてものじゃない。この物語はもっと重層的で多面的だった。
詳しくはもちろん映画を見てくださいというところですが、ある家庭で良多が目の当たりにした、時間が血の繋がりを超えた瞬間、ほんの数秒でなんでもないと見過ごされそうなあのシーンがこの映画で果たす役割はとても大きいし、あのシーンの雄弁さと、そのすぐ後に続く密やかなやりとりの親密さが僕にはとても美しく写りました。


他にも褒めちぎりたいシーンはたくさんありますが、とりあえず大空でフィッシングなあのシーンで久しぶりに映画館で涙しました。


役者陣について言うと、子役の演技についてはさすが是枝監督!という間違いないものがありますし、リリーさんのダメな大人でイイお父さんなキャラはばっちりハマってましたね。『凶悪』からの振れ幅がすごすぎるけれど、どちらでもイケるリリーさんはもう名俳優と言って問題ないのでは。もうひとりの『凶悪』もオイシすぎ!
あと僕が大変好きな中村ゆりさんが出てるのも嬉しかったな〜。この人がスクリーンに出るだけで僕の中では5億点ですよ!


早くこの2つの家族の10年後を描いてくれないですかね?是枝監督。