相対性理論 − 正しい相対性理論

このエントリーをはてなブックマークに追加

相対性理論による新作は彼らの新曲3曲に加え、そうそうたるメンツによるリミックスを合わせた全13曲収録の「正しい相対性理論」別名”ミュータントアルバム”
ちなみに、ミュータント=突然変異体なわけで、言ってしまえば彼らの作品はどれもミュータントであり続けてここまできた。
そんな変体生物にさらなる化学変化を引き起こそうとするリミキサー陣はさしずめマッド・サイエンティストといった趣でこれまた好き勝手に相対性理論の楽曲を再構築している。
リミックスの内容は多岐にわたるが、それらをあえて大別してしまえば、楽曲を完全に素材として”使用”するものと基の楽曲を最大限に生かして”活用”するものになる。
前者の好例はMatthew HerbertによるM2「QJPCAM」であり、後者のそれはCorneliusによるM12「OKMAC」になるだろう。
M2は「ペペロンチーノ・キャンディ」の”ペ”という破裂音を延々とリフレインさせることにより、やくしまるえつこの血液が通っていないのだけれど決してプラスティックには聞こえないあの声の中毒性がブルーマジックよろしく高純度化されて脳を浸食する。
対照的にM12の瑞々しいまでのポップネスはなんだろう。Corneliusが傑作「Point」から培ってきた人肌の暖かさを兼ね備えたサウンドコラージュが「ミス・パラレルワールド」を文字通り突然変異させてしまっている。
気になる新曲は3者3様。タイトルに正しい相対性理論と銘打っておきながら、それぞれ全く別の顔を見せるという人を食った構成だ。
アルバムのトップを飾る「Q/P」はこの3曲の中では最も今までの延長線上にあると言える。ただしその体躯は無駄をそぎ落としてえらくストイックに絞られており、彼らが持つビートとリズムに対する意識の高さを思い知らされる。
M7は本気とユーモアの境界線を行き来する「Q&Q」
昭和のアイドルソングを彷彿とさせる牧歌的なメロディラインは、しかしながらやくしまるえつこヘタウマな歌唱によく合っており普段は最先端のポップを聞かせる彼らのほつれが楽しめる。とは言えこれが彼らの正しい姿だったら困るのだが。
最後の新曲はアルバムのラスト「(1+1)」
冒頭から打たれるやけにエッジの効いたビートにまずは面食らい、アーバンな空気を醸し出すミニマルな音作りはおおよそ相対性理論とは結びつかないが不思議とすぐに馴染んでしまった。M7同様にこれも正しい相対性理論像としては違和感を禁じ得ないが、この路線でアルバムを作ったとしたら小沢健二にとっての「eclectic」のようなアルバムが出来そうで、それはかなり聞いてみたい。



正しい相対性理論

正しい相対性理論