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映画「塔の上のラプンツェル」 10年 米

監督:バイロン・ハワード
   ネイサン・グレノ
声の出演:ラプンツェルマンディ・ムーア中川翔子(吹き替え)
     フリン・ライダー:ザッカリー・リーヴァイ・畠中洋(吹き替え)


長い金色の髪を持つラプンツェルは18年も高い塔の上に閉じ込められたままで過ごしている。
窓から見える外の世界、特に彼女の誕生日の夜に毎年上がる不思議な光に憧れる彼女は外の世界を目指すが母親のゴーテルはラプンツェルに外の世界は危ないところだと言って聞かない。
そんなある日、お城から高価なティアラを盗み出した盗賊のフリンが命からがら逃げ出した先でラプンツェルの塔を見つける。
自慢の長い髪でフリンを捕まえたラプンツェルはフリンのティアラを返す代わりに取引を申し出た。
「明日の夜、私の誕生日に上がる不思議な光の場所まで連れて行って」
こうして塔の外に出たラプンツェルだが母親のゴーテルはすぐに彼女の不在を発見する。
ラプンツェルは目的を果たすことができるのか。


原作はグリム童話ラプンツェル
ディズニー劇場アニメーション50作品目の今作はその原作から基礎となるアイデアを抽出し見事な物語に落とし込んだ良作だ。
なによりプリンセスのキャラクター設定がよい。
屈託なく希望に満ちたお姫様というのはディズニーのプリンセス映画にとってなくてはならないものであるが、このラプンツェルはそれだけにとどまらない。
彼女の魅力が画面一杯にあふれ出すのはやはり狭い世界を飛び出して外へ出たときだ。
初めて触れる草の柔らかさ、川の水の清らかさに体いっぱいで喜びを感じる彼女。しかしその直後、彼女は母親の言いつけを破って外へ出た自分を責める。この両極端な感情の揺れ。
喜んで、落ち込んでという描写が何度か繰り返されるのだが、そのリズムの良さが笑いを誘うし、落ち込んだときの彼女の描写がたまらなく愛おしくて誰だって彼女に恋するだろう。
特に日本語吹き替えならばラプンツェルを担当した中川翔子さんのキャラが重なってより主人公の底抜けの明るさとそこからの反動が楽しめるのだから、声優の人選がうまくはまった好例としてここは特筆しておきたい。
ちなみに吹き替えの話題で言えば、ディズニー映画に不可欠のミュージカル部分。曲の素晴らしさもさることながら、歌声もとても素晴らしかった。
見ている間は「しょこたんすげー!歌うまいと思ってたけどここまでか」と思っていたのだが、エンドロール見たら歌は小此木麻里さんという方が担当されていたっていう(笑)
でもこれって、しょこたんって言われたら疑わないくらいしょこたんに実力があるってことの裏返しだし、会話部からミュージカル部に移ったときに違和感が出ないようにしょこたんの声に似た声優さんをキャスティングした制作側のグッジョブ!ってこと。もちろん小此木麻里さんもグッジョブ。本当に素晴らしい歌声だった。
そして今作の一番の見所は3D表現。往々にして「看板に偽りあり」が甚だしい3D映画だが、今作は3D版を見るのがマスト。
といっても3Dで良かったと思えるのは中盤のある場面くらい。でもその場面がもうため息が出るくらいに綺麗なんだよ!
ちなみに僕は初めてMasterImage3Dという形式で見たのだが、これだとXpanDと違ってメガネは重くないし、色の変化も少なくて良かった。


「あきらめなければ夢は叶う」
この陳腐とも言えるメッセージを臆面なく語るのがディズニー映画の真骨頂だが、今作の素晴らしさはその先を見据えていることだ。
「夢を叶えたら、また次の夢をみつければいいんだよ」
男主人公であるフリンが放つこの言葉。プリンセスものだから、というだけで敬遠する男の子もこの言葉を聞けば拳を握りしめることは必至。
この絶妙なバランス感覚がなにより今作の魅力だと強調しておきたい。