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映画「収容所のラブレター」
監督:Michèle Ohayon

第二次世界大戦中、ユダヤ強制収容所で交わされたラブレターに焦点をあてた作品。ジャックには心に決めていた女性イナがいたが、親の都
合でマンヤと結婚させられてしまった。そんな中、三人はユダヤ強制収容所に連行され、悲惨な環境の下共同生活を強いられる…。
from 松島・町山 未公開映画際HP


昨日紹介した映画「600万のクリップ」に続いて同じくホロコーストを題材にとった映画がこの「収容所のラブレター」だ。
この作品が僕に伝えてくれたのは人間の根源的な部分での変わらなさ。
もちろん食うものも食えずいつ殺されるかもしれぬ環境に閉じ込められて通常とは違う顔を見せる人もいただろう。
けれどそれすらも大体の場合は状況が人にそうさせたわけでなくその人はもとから深い部分でそうだっただけなのではないかと思う。
劇中でわずかな食料に対してジャックとマンヤの夫婦が違う振る舞いを見せるシーンがある。
互いに思い惹かれ合うイナと再び会うために、生き延びて彼女と結ばれるためにジャックがとった行動はパンを誰にも譲らないことだった。例えそれが友人の子供を助けるためだったとしても。
一方マンヤはパンを分けた。例え相手が夫を自分の手から奪い去ってしまう女だったとしても。
結局、ジャックとイナは連合軍の収容所開放を経てめでたく結ばれた。今では結婚60周年だ。
一方マンヤはジャックと別れた後ひとりを貫いて死んでいった。
仮にこの3人が戦争に巻き込まれず穏やかな生活を営んでいたとしても、きっとジャックは自らの欲望を最優先に行動していただろう。
マンヤはマンヤで変わらずに他人のことを大切にしていたと思う。
誰が悪いわけでも、間違っているわけでもない。
しかし悲劇の渦中にあったというだけでジャックの物語を美談として受け止めるには僕はマンヤの振る舞いに少々肩入れしすぎているのかもしれない。