てっちゃん

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2日目。最終日。
「今日は朝から攻めますよ」
うどんマスターが自信満々に宣言する通りこの日は朝からキング・オブ・さぬきのタイトルホルダー山越、そこから谷川米穀店という豪華なセットリストで始まるうどん行脚。
あのかまたまにまた出会えると思うと筆者も高まる興奮を抑えられず、昨晩など布団に入って数秒で気絶。そこからアラームが鳴るまで一切目を覚ますことのないくらいに興奮していた。
「体調はバッチリ。今日も食うぞー!」
空腹感に威勢の良い唸りをあげる胃袋と呼応するかのように筆者も決意のほどをぶちあげた。
しかし訪れてみるとこの日、山越は休業日‥。いつもなら大勢の人で賑わう軒先も今日は寂しい。
「えええええ!!おかしい!!」
狼狽するうどんマスターの横で筆者が物の本で調べてみると谷川米穀店もこの日は休業日。
「す、すいませんっっ!!休みの日を完全に見逃していました!」
「まあ仕方ないよ。ここからだとどこか近いところはあるの?」
「はい。たむらがあります。去年も行ったところです」
「じゃあとりあえずそこに行こう」
予想外の展開で訳がわからなくなっているうどんマスターを落ち着かせるべく筆者は努めて沈着冷静に振舞い、すぐさま次のアクションに移ることができた。
しかし行ってみるとたむらも休業日。
店の前で呆然とする筆者とうどんマスター。
「いやぁ厳しいっ!」
さすがの筆者もこれには音を上げてしまった。もはや空腹感は理性を凌駕する勢いだ。
「もうなんでもいいよぉ。適当にそこらへんの国道沿いのうどん屋入ろうや」
ヤケ気味の筆者を気まずそうな顔で見ることしかできないうどんマスターも自らのミスが招いた事態だけに口をつぐんでしまっている。
しばしの思考停止。しかしこのままでは埒があかないことは筆者が一番良く分かっている。
「よし、わかった。じゃあさ、今日は俺が今まで行ったことのない店を巡る日ってことにしようぜ!」
「は、はい!それであればいい所があります」
テーマさえ決まればそれに見合った最高の仕事を遂行するのがうどんマスター。すぐさま彼は行き先を弾き出した。


てっちゃん



肉味噌温玉うどん


なんと行ったことのない店というリクエストにうどんマスターが持ってきたのはこの変わり種。
当然のことながら通常のうどんに比べて分かりやすい旨みが濃厚に味覚を刺激してくる一品ではあるが、それは決してうどん自体の出来の悪さを露呈しないためのギミックなどではなく、むしろうどんという完成された小宇宙に新しい可能性を提示するための偉大なvoyage。
こういう新しい試みが行われる土壌があることはとても幸福なことだ。
そしてこのうどんはちゃんと旨いという事実できっちり現状のbreak throughを果たしている。
怪我の功名なんかではなく出会えたことが必然に思える素晴らしいお店だった。