The Enforcer

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映画「ダーティハリー3」 76年 米
監督:ジェームズ・ファーゴ
主演:クリント・イーストウッド


とある事件の責任を取るかたちで殺人課から人事課へと移動させられたハリー(クリント・イーストウッド)。
その一方でサンフランシスコではまた新たな凶悪事件が発生。
ハリーが異動するまでパートナーを務めていた刑事は犯人達に殺されてしまう。
そこで急遽殺人課へと復帰したハリーは新たな相棒と組むことになる。
しかしその相手というのがハリーの人事課での初仕事で面接をした新米女性私服刑事のムーア(タイン・デイリー)だった。



今回のハリーが相手にしたのは膨れあがる女性進出の波と欺瞞に満ちた権力であって、ハリーの44マグナムに仕留められる犯人達がそのお膳立てに過ぎないことは明白だろう。
物語の序盤でハリーはこの社会が要求する新たな時代の訪れに怒気を隠さずに抵抗する。
しかしそこにあるのは男根主義が衰えることへの焦りや短絡的な女性蔑視ではない。
現にハリーはこの新米女性刑事の持つ仕事へのひたむきさや情熱を後に認め、物語の最後には彼女に対する一種の愛情をさえ我々に垣間見せる。
それではハリーをして、そこまで女性の進出を拒んだのは一体なんだったのか?
言うまでもなくそれは殺人課という部署の抱える日常的な危険性への危惧だ。そしてこの女性進出が権力の後ろ盾に行われていることへの抵抗だ。
この市長は結局信念ではなく自己の権力を保持する方便としてしかこの社会的問題を捉えていない。
だからこそハリーは吠えるのだ。
「こんなのは間違っている。こんな風にして社会に認められたところでそれは結局男性の優位性の証左にしかならいだろう」と。
ダーティハリーはしばしばマッチョイズムの象徴として語られることのある映画だが、この映画のどこを見てそう言えるのかが判らない。
ハリーはいつだって強きを挫き、弱きを助けているだけなのだ。



ダーティハリー3 [DVD]

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