The Outlaw Josey Wales

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映画「アウトロー」 76年 米
監督:クリント・イーストウッド
主演:クリント・イーストウッド


南北戦争末期、農夫のジョージー・ウェールズクリント・イーストウッド)は北軍ゲリラの蛮行により妻と子供を殺されてしまう。
彼らに復讐するべく彼自身も戦渦に混じってそのときを待つが戦争は終焉を迎え、北軍に降伏しなかったジョージーはその首に懸賞金をかけられて追われる身となる。
行く先々で賞金稼ぎとの戦いをしながらもインディアンのローン・ウェイティ(チーフ・ダン・ジョージ)や開拓移民の娘ローラ・リー(ソンドラ・ロック)という随行者を引き連れて彼はいつの間にか過去の悲劇によって失っていた心を少しずつ取り戻していく。
しかしその間にもジョージーを追う北軍の大尉にしてジョージーの家族を殺した張本人であるテリル(ビル・マッキーニー)は着実にジョージーに近づいている。
そしてついに二人は相まみえる。


映画を見ながら絶えず思うことは、当時の人たちの暮らしについて。
僕は極端に過去(日本にとってのいわゆる戦前)の文明をそれこそ原始時代かのように捉えてしまっているくらいに狭量というか認識のピントがずれているために、本や映画などでその頃の暮らし向きを知る度にその穴埋めをすることになるのだけれど、今回は特に服装に目がいった。
南北戦争の末期といえば西暦で1860年代になるそうだが、今の時代でも全く違和感のないくらいにデザインも質感も洗練されている。
もちろん映画の衣装なのだから、あれがそのまま当時の状態ではないだろうけれど非常にグッドルッキング。
映画の内容に話しを戻すと、まず脚本がいい。
話の推進力は復讐の遂行に尽きるのだけれど、その中にインディアンの老人、身寄りのない娘(これもインディアン)、そして白人によって圧迫を強いられているインディアンの集落というマイノリティとの接触があって、そのうちの全てのキャラクターが偏見や過剰な物語的脚色によって歪められることもなく描かれていることに好感。
イーストウッドという人の常に現実を冷静に見据えた公平な視点がここでもはっきりと認められて、彼のその批評眼に敬服する者としてはもはや言うことなし。
だけども、この映画ではやたらと可愛い(他の映画でももちろんです!)ソンドラ・ロックがやっぱり強姦されそうになるんですよね。
これでアウトローガントレット、ブロンコ・ビリーと彼女が出演しているイーストウッド映画3本で彼女はあわや!の危機を演じることになります。
内2本(今作とガントレット)では乳房をさらけ出し、さらに今作ではお尻までも献上しているといった具合にその女優魂には頭の下がる思いなのですが、どうもイーストウッドの恣意性を感じざるを得ない。
まるで大林宣彦監督のそれのようにイーストウッドにも何かしらの”趣味”があるのかしらん。
西部劇のヒーローといえば無頼だけれど腕は確か、という定石があるけれど、イーストウッドはそこに悲しい過去を背負った人間の陰影を忍ばせることで既存の西部劇からの脱却を試みたようです。
これが後の「許されざる者」の世界観に繋がったのかもしれません。
ということでイーストウッド詣でとしては確実におさえておくべき一作と言えるでしょう。