Synecdoche, New York

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映画「脳内ニューヨーク」 08米
監督:チャーリー・カウフマン
主演:フィリップ・シーモア・ホフマン


タイトルの軽妙さとポスターのビジュアルから軽い気持ちで見に行くとトンデモナイ目にあう。
これはとてつもなくペシミスティックで陰鬱で寂しい物語。
僕は全然楽しめなかったし、好きじゃない。と言うのはこの映画の中身の大半を理解できていないから。
でも、この映画がとてつもなく大きな何かをやりとげてしまったことはわかる。
大体において僕は芸術的とかオシャレとかいった看板を傘に「ワケノワカラン」世界を好き勝手に展開する奴や、そんな作品を
ありがたそうに礼賛する奴らが嫌いだ。
そもそも今回の映画が監督としては初の作品になったチャーリー・カウフマンには、氏が脚本を手がけた映画
エターナル・サンシャイン」でまさにそんな印象を持つに至っていた。
でもこの映画は違う。
ところどころにはやはり氏の特徴とも言える独特の世界観、今回の映画で例を挙げれば、何故かサマンサ・モートン演じるヘイゼルの家が
常に火事に見舞われている(これ、映画見ないと意味わかんないだろうな)とか、他にも普段なら「ケッ」と鼻じらんでしまうような演出があったのですが
それ以上に映画全体に流れる途方もなく大きな哲学的思考の渦に飲まれてしまって、そんな些細なことはむしろ愛らしいユーモアとして享受出来てしまう。
エターナル・サンシャインはただワケガワカランだけだったので見た後には怒りしかなかったのですが、今回は完全に打ちのめされました。
特に後半の現実の中に虚構があり、虚構の中に現実があるような重層構造の世界が構築されたときには
「こんなアイデアよく思いつくなぁ」とただただ氏の想像力と、そんな理解し難い発想をこうして映画というパッケージに纏めた手腕に脱帽でした。
全然好きじゃないはずなのに、頭の中は完全にこの映画のことで一杯になっている。
これはほんとにとてつもない映画です。