Judgement

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裁判員制度は平成21年5月21日から始まる。
その是非は様々あるが、まずはこの制度の実態を知らねば好いも悪いもないだろう。
まず裁判員に選ばれるまでの過程なのだが、調べてみると意外なことが多々あった。
裁判員制度は一年ごとに候補者を選んで始まる。そして候補者に選ばれた人にはその前年12月に通知が来る。つまり早い人には今年の12月に通知が来ることになる。運がよければ(?)選ばれもしない人だっているわけだ。
それから実際に裁判所に赴くことになる人には担当するかもしれない裁判が行われる6〜8週間前に呼び出し状が届く。これは前もって参加の辞退事由(高齢者・病人・学生等)が明らかな人たちが届出をするためや、仕事などのスケジュールの都合をつけるためだ。
呼び出し状は一つの裁判につき大体50通を予定しているそうで、ここから実際に裁判員になるのは裁判官・検察官・弁護士との面接を経て裁判員になる資格を認められた人達の中からさらに抽選で決まった6人だ。
面接で裁判員免除になる主な基準は1.その人が抱えている仕事や用事の日付の代替性、もしくはその人自体の代替性の有無、2.周りへの悪影響の大きさ、だそうだ。
1.に関しては例えば、長い年月をかけて計画していたプロジェクトの実行日が裁判の日に当たっただとか、その人以外にその仕事を果たせる人材が見つからない場合等が該当する。
2.に関しては例えばキャバクラやホストの姉ちゃん兄ちゃんがその店の売り上げの大部分に貢献している場合なんかにも考慮の対象になるかもしれない。店の経営に悪影響を及ぼすからだ。
思ったよりも融通がきくみたいだが、基本的にこれらは特例だろう。
ちなみに実際に裁判員にならなくても面接を受けるだけで8千円の日当。裁判員になると1万円の日当がでる。


面接が終わると選ばれた裁判員はそのまま午後から審理に入る。
スケジュールは今のところ大体3日程度を予定しているそうだ。これは模擬裁判を経て立てられたかなり現実的な日数。
1日目は午前9時から面接。昼休憩を挟んで午後5時まで審理。
2日目は午前9時から午後5時まで昼休憩ありで一日審理。
3日目は午前と午後の一部を使って評議。それから判決。


以上が裁判員になる人が通る大まかな流れだ。


一般に言われている裁判員制度のメリットは、司法が身近なものになり犯罪への意識が高まること。裁判官にはない一般人の感覚が判決に反映されることなどがある。
後者に関してはそれがために判決がぶれる恐れもでるが、今まで半ば慣例だった判例主義が是正されるという期待値も含んでいるだけに動向が気になるところだ。こればっかりは生ものだからやってみなければ判らないだろう。
裁判員のセキュリティに関しては不安の声も多くあるようだが、今まで名前も顔も所在地さえはっきりしていた裁判官がそれがために襲われたということが頻発していただろうか?
問題は被告人の関係者からの防犯よりもマスコミだろう。もちろん法律で既に裁判員への取材に関する規制はあるようだが、それでもこの不安の方が拭いがたい。裁判員には守秘義務が発生するため、うっかり取材に応じて…なんてことも在り得ない話ではないだろうし、もっと言えば裁判員のプライバシーが侵害される恐れさえある。制度が落ち着けばなんてことはない問題だろうが、制度の開始直後などは気をつけなければならない。


気になることや不明瞭な点はまだまだあるが個人的には選ばれた限りはしっかりと役目を果たしたいと思っている。制度自体には賛成だ。
現代人に希薄な社会への参画意識の向上には間違いなく貢献するだろうし、実際の裁判を通して文明社会に生きる人間としての倫理観を養うにはもってこいだ。人が人を裁くということが一体どれほどの行為なのかを考えたり、はたまた犯罪を犯すということが映画や小説の中のフィクションではないというリアリティを身をもって体験したりすることは文明人には避けて通れない命題だ。
人間に与えられた考えるという力を生かす場として裁判員制度は恰好の舞台になるだろう。