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The Internship

映画
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映画『インターンシップ

監督:ショーン・レヴィ

主演:ヴィンス・ヴォーン

   オーウェン・ウィルソン

 


『インターンシップ』2015.3.18 先行レンタル配信/4.3ブルーレイ&DVDリリース - YouTube

 

 アメリカの山口智充ことヴィンス・ヴォーンとお笑いからラブ・ロマンスまで幅広くこなすオーウェン・ウィルソンがタッグを組んだコメディ映画『インターンシップ』をiTunesで視聴。グーグルが撮影に全面協力をしたということで話題になった映画です。

 

 このふたりが組んだとなれば触れずにいられないのが05年公開の大傑作『ウェディング・クラッシャーズ』でしょう。

 知らない人の結婚式に潜り込んでは豪勢な料理と女性を食いまくるプレイボーイのふたりがとある姉妹と出会ったことで様々な困難に巻き込まれながら本当の愛に気がついていくという、ストーリーとしては決して目新しいものではないながら、テンポの良い語り口に笑えるギャグの応酬が功を奏して興行収入は2億ドルを突破した大ヒット映画。だってのに日本じゃ劇場未公開でDVDスルーの憂き目に会うという「アメリカコメディ映画あるある」な現状でした。

 ちなみに過去、テレ東の午後のロードショーで『ウエディング・クラッシャーズ 結婚式でハメハメ』という品性下劣な邦題と共に地上波オンエアはされているそうです。(こういうドイヒーな邦題がつけられがちなのもアメリカコメディ映画あるあるだよなぁ。観ればわかるけど結婚式でハメハメするのはあくまであらすじ上のオカズみたいなもので、本質は無責任で享楽的だった男の成長譚です。日本における海外コメディへの冷遇については長くなるので割愛しますが、不必要なミスリードで作品を不当に貶めるのはやめたほうがいいと思います)

 

 閑話休題

 『ウェディング・クラッシャーズ』から約10年が経過して、すっかりおじさんになったふたりが今回直面したのは時代の移り変わりでした。

 主人公のビリー(ヴィンス・ヴォーン)とニック(オーウェン・ウィルソン)の仕事は高級腕時計の営業職。ウィットに富んだ話術で抜群の営業成績をあげてきた彼らでしたが、ある日会社が突然閉められてしまいます。理由は「いまどき誰も腕時計なんて使わない」という無情なもの。会社で事務員をしているおばあちゃんまでもがスマホで時間を確認する様を見たふたりは途方に暮れてしまいます。

 とつぜん職を失ったふたりはすぐに新しい職を探しますが年齢的なハードルと職能スキルの狭さからなかなか仕事は見つかりません。そんな時、ビリーは仕事を探すために開いたコンピューターの画面に写る「Google」の文字を見て閃きます。それはグーグルが開催する夏のインターンシップに参加して職を得ることでした。

 

 と、あらすじはこんなところで。この映画の見所はなんといってもグーグル本社の様子を垣間見れるところでしょう。まるで大学のキャンパスのように開放的な広場や、大きな滑り台に代表されるような遊び心に満ちたオフィスなど、噂には聞いていたけれど実際に見ると驚きの連続で、これだけでも十分に楽しいくらいです。

 とは言えこの映画、ただ今どきのクールな会社を取り上げて話題性を狙っただけではありません。むしろグーグルが舞台でなければならなかったのです。それはこの映画が断絶をテーマにしているからです。インターネットというあらゆるヒト・モノ・コトを接続していく技術でのし上がったジャイアントの足元に蔓延する断絶。それは世代間の断絶であり、異性間の断絶であり、親子の断絶です。遠くの世界と簡単に繋がれるようになったことが身近な人々との関係性を築けなくさせてしまうという皮肉を描くうえでグーグル本社はこれ以上ない舞台設定です。

 

 時代遅れのおじさんであるビリーとニックはHTML5がいったい何なのかわからないし、アメコミの知識もクィディッチも知りません。でも彼らは誰かを恋しく思うときの胸の高鳴りを知っているし、仲間と飲み明かして迎える夜明けの心地よい疲労感や朝焼けの美しさを知っています。そしてこれらはグーグルの検索窓にどんな言葉を入力しても手に入らないものなのです。

 勘違いしてほしくないのは、この映画は決して「古きよきものこそ善なのだ」という価値観を押し付けてくるわけではありません。むしろ変わっていく時代に背を向けて過去を懐かしむだけでは生き延びていけないという現実を描いているし、新しいことへ挑戦するひとの背中を押してくれるような優しさもあります。

 けれど変わっていく時代の中で変わらないものもあるのです。この映画が素晴らしいのは、そのメッセージを説教臭いやりかたでなく最高にバカバカしい映画的表現で描き切っているところです。ずっとスマホの画面ばかり見ている若者におじさんふたりが見せたものはなにか。ヒントは「決して公共の場では見ないでください」ってこと。僕は新幹線の車内で見ていたのでかなり焦りました(笑)

 

 最後に主演のヴィンス・ヴォーンについて。彼は今回ストーリーと脚本も担当しているのですが、まさかここまで書ける人だとは知らず本当に驚きました。役者として彼のセリフ回しの上手さが以前から大好きだったのですが作り手としてもこれだけのものを作られちゃあ敵いませんね。自分で書いたセリフだからなのかいつもに増して彼の畳み掛けるような口調がキレキレで大変楽しかったです。

 ヴィンス・ヴォーンオーウェン・ウィルソンのコンビに外れなし!そしてこのふたりの映画に欠かせないあの人も登場します。現行アメリカコメディ好きならば当然チェックするべき!

 コメディってちょっと苦手という人も、日常的に利用しているグーグルの内部を覗き見できるというだけでも楽しい映画だと思います。それに基本的なストーリーはわかりやすくて見やすいですよ。

 ということで『インターンシップ』、前作『ウェディング・クラッシャーズ』と合わせてぜひご覧になってみてください!