尊厳死と安楽死の基礎
以下、TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』の10月31日(金)放送分より概要を書きだした。完全な文字起こしではないので、僕の捉え方が含まれている箇所もあることは了承ください。
本文、ここから。
YouTube上で11月1日にを自ら命を断つことを予告していたメイナードさんというアメリカ人女性が、実行を延期したというニュースがあった。
尊厳死予告の米女性が新たな動画、実行日の延期を示唆 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
末期の脳腫瘍を患っていることがその理由だということ。
住んでいたカリフォルニアでは尊厳死が認められていなかったためオレゴン州に移り住んでいる彼女は医者から飲むだけで命を立つことが出来る薬を処方されている。
現在、世界で尊厳死が認められている国は以下。
・アメリカ5州(オレゴン州、ニューメキシコ州、モンタナ州、バーモント州、ワシントン州)
・オランダ
・ベルギー
ベルギーでは、最高齢アスリートとして愛されたエミール・パウウェルス氏が安楽死を選んだことで話題になった。
ベルギー最高齢アスリートが安楽死、シャンパンで乾杯して旅立つ 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
ここから金曜コメンテーターの宮台真司氏の解説。
・安楽死
日本でも安楽死は『事実上』合法化されている。
詳しくは1991年に東海大学医学部附属病院にて起きた東海大学安楽死事件を参照。
この判決で安楽死4条件が制定される。
原則としてこの条件をみたす場合、日本でも安楽死が認められている。
・治療法がない末期患者であること
・耐え難い肉体的苦痛があること
・苦痛を緩和する方法がないこと
・本人の意思があること
尊厳死とは上記の4条件が緩和されて、患者が肉体的な要因ではなく、精神的な要因から自らの死を選んだ場合、つまり自らの尊厳を保つための死である場合を言う。
安楽死に比べて尊厳死を認めるのが難しいのは、尊厳とは極めて主観的であるから。
肉体的苦痛は実際に痛みを感じているのは患者本人かもしれないが、その辛さは傍から見てわかる場合が多い。
しかし尊厳は各個人の心の持ちようなので外目にはわかりにくい。
尊厳死を望む人の「自分の尊厳を尊重してくれ」という主張が通るのならば、その反対に周りの人の「お前を必要としている。お前が死んだら悲しむ人がいる」という主張にも理屈がある。
そこに尊厳死の難しさがある。
尊厳死を選ぶ人が「おれの尊厳は踏みにじられている」という不幸な思い違いで命を断つ可能性もあり軽々に認めることが困難なのだ。
そもそも自殺と尊厳死の違いはなにか。
国によっては報道で尊厳死を自殺の権利と表現している。
尊厳が主観的であるかぎり、周りの人々がその選択を受け入れているか否かの違いでしかない。
番組の内容はここまで。
ひとはいつか死ぬ。それはみなに共通の絶対の事実。
でもほとんどの人が自分は明日死ぬとは考えていない。
常に死について考えろなんてこと言わないし、言ってる奴がいたら平気で無視する。
でも、ほんのたまに死に向き合ってみることは悪いことじゃないと思う。
自分や、自分の大切な人がメイナードさんと同じ境遇だったら、その選択肢を選ぶだろうか。選んだ人を受け入れられるだろうか。
追記:その後、メイナードさんは予告通りに尊厳死を実行しました。
下記、記事内で紹介されていたコメントの抜粋。
「彼女が自殺することを勇敢と言うなら、最期まで闘い続ける何千人ものがん患者はそうでないのか、という意見がある。どちらの決断も勇敢ではないだろうか。何が勇敢で何がそうでないか、私たちは決める立場にない」
CNN.co.jp : 脳腫瘍の米女性、予告通りに尊厳死を実行 - (1/2)