この空の花 長岡花火物語

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映画:この空の花 長岡花火物語
監督:大林宣彦
主演:高嶋政宏 松雪泰子



すごい映画でした。見ている間じゅう詩と散文のことを思いました。
詩は言葉でありながら言葉以上のものを表わし、詩だけが人を鼓舞します。
その点で言えばこの映画は一編の詩です。
劇中、長岡の花火を愛した画家・山下清の言葉が引用されます。
「みんなが爆弾なんてつくらないで、きれいな花火ばかりをつくっていたら、きっと戦争なんて起こらなかったんだな」
花火と爆弾。この2つは非常によく似た構造と成分を持っています。
しかし、花火は詩であり、爆弾は散文です。
人が恐怖を感じるのはいつか?それは想像の範囲を超えた事態に直面したときです。
散文は人の想像力を阻害し、ときに奪い取ります。
詩は人の想像力に訴えかけ、それを喚起します。
大林監督はフィクションとドキュメントを継ぎ目なくさまざまな視点から語る複雑な構成に加えて、劇映画にして演劇でもあるという実験的な演出を見事スクリーンに落としこみ、過去と現在を描きながら未来に生きる子供たちへの詩を詠み上げました。
8月1日、長岡の空に3発だけ打ち上げられる真っ白な花火。いつかこの目で見てみたいものです。