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아저씨

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映画「アジョシ」 10年 韓
監督:イ・ジョンボム
主演:ウォン・ビン
   キム・セロン





どえらいものを見てしまった‥。とエンドロールを眺めながらついさっきまでこのスクリーンに映し出されていたものを思い返してみる。
スピード感抜群の格闘シーン。切り刻まれた裸体にえぐり取られた目玉。どす黒い鮮血。「いよっ!待ってました!」とかけ声のひとつもかけたくなる跳び蹴りシーンもちゃんと用意されていた。
けれどウォン・ビンが、ウォン・ビンが頭から離れない。
かっこいいのだ。それはもう男の私から見てもほれぼれするくらいに。
見どころは数え切れないほどあるが、ひとつ選ぶとすればやはり鏡の前で無造作に伸びた髪を切り落とし戦闘モードに入るところだろうか。
ある過去の出来事から絶望し、死んだように生きていた男が再び戦士となり大切なものを守ろうと立ち上がる。ありきたりのクリシェかもしれないが、この物語は何度でも再生産されなければならない。それは僕たちの人生がいつでも、どこからでも、何度だって、巻き戻しは出来ないが、再生は可能だからだ。
劇中、暴力の描写は顔をしかめてしまう程度に残酷で痛々しい。それでも最後には一種の爽快感とでも言うべき感情が残る。
それはこの映画が基本的にはヒーローものだからだろう。だからこそこれだけの内容で韓国映画興行収入第一位を記録できたのだ。
今年公開で今作と同じように陰惨な描写をこれでもかと繰り出した日本映画「冷たい熱帯魚」はアンチヒーローの物語を絶望過ぎて笑うしかないブラックなコメディに昇華した。作品の素晴らしさは言うまでもないがこちらはいわゆる好事家たちからの評価という枠を超えられなかった。
同じだけ悲惨で残酷な物語が行き着く全く違った景色。この違いがもどかしい。
いつか日本でも陰惨で悲しく、それでいてニヒリスティックにならない正統派のヒーロー映画が国民的大ヒットになるのだろうか。