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True Grit

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映画「トゥルー・グリット」 10年 米
監督:ジョエル・コーエン
   イーサン・コーエン
主演:ジェフ・ブリッジス
出演:マット・デイモン
   ジョシュ・ブローリン


父親を雇い人のチェイニー(ジョシュ・ブローリン)に殺された少女マティ(ヘイリー・スタインフェルド)が遺体を引き取りに使用人を引き連れてオクラホマ州境のフォートスミスへやって来た。
遺体を確認すると彼女は使用人を先に帰して自分は別の用事があるのでしばらくここに残ると伝える。
父を殺したチェイニーに罪を償わせるつもりだった。
町で腕利きの保安官コグバーン(ジェフ・ブリッジス)をなんとか説得し、彼女はチェイニーが逃げたとされるインディアン居留地へ入る。
別の容疑でチェイニーを追っていたテキサス・レンジャーのラビーフ(マット・デイモン)も加わり3人は過酷な荒れ地を踏み分けていく。


69年にジョン・ウェイン主演で制作された「勇気ある追跡」のリメイクでありチャールズ・ポーティスの同作品の原作小説の再映画化でもある今作は少女が過酷な旅を通して成長する様を描くという物語の筋としては至極シンプルなものだ。


物語の語り手であるマティを演じたヘイリー・スタインフェルドは演技の巧みさもさることながら蒼井優を思わせる垢抜けないルックスが役柄の芯が強くそれでいてまだ幼い14歳の女の子でしかないという絶対的な事実をうまく引き出していた。
特にコグバーンを説得して共に犯人を追いかけるはずが、危険を案じた彼によって置いてけぼりをくった彼女が彼とラビーフに追いつくために決死の覚悟で川を渡るシーン。川の深さと流れの速さに負けそうになりながら、それでも亡き父親のためにと懸命に川を渡る間にころころと変わる表情がとても良かった。顔だけでここまで魅せられるものかと心底感心してしまったほどだ。


今作はコーエン兄弟による抑制の効いた演出もあって、わかりやすい高揚感は得がたいかもしれない。まあこの不思議な鑑後感はコーエン兄弟の作品に通底するいつもの感じのままではある。しかし今作はそこに得も言われぬ感傷がついてくるのが今までの作品とは一線を画すところで、涙は出ないけれど、気持ちがスッキリとする感じがとても愛おしくしばらくはその気持ちに浸るために星空の下をぶらぶら散歩しながら帰宅した。
ちなみにこの星空の下をというところがポイント。美しさと畏怖の念が同居するあの景色、そこを駆ける駿馬の疾走感と悲壮に満ちた男の切迫。これまでの話はとにかくこのシーンを見せるためだけの前振りでしかなかったと言ってもいいくらいにクライマックスがちゃんとクライマックスしている。素晴らしすぎて呼吸を忘れた。
映画館を出たときに世界が変わって見えるかどうか、これを完成度の尺にするのならば今作は間違いなく高い完成度をもっているだろう。けれど、それが機能するのはとにかく夜だ。
レイトショーならば料金も抑えられて一石二鳥。
打ちに行きたければ(切なさを楽しみたければ)夜の回がオススメです!!