Whatever works

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映画「人生万歳」 09年 米
監督:ウディ・アレン
出演:ラリー・デヴィッド
   エヴァン・レイチェル・ウッド


「舞台はニューヨーク。
かつてはノーベル賞候補とまで言われた物理学者のボリスが南部の田舎から家出してきた少女・メロディにせがまれ彼女を数日間のみという条件で家に泊めることになった。
頭が良すぎるがために厭世的になり、ひねたことしか言えない老人と、南部の保守的な家庭育ちで頭は良くないが素直で明るい娘。
初めは悪態ばかりついていたボリスだったが次第に彼女の素直さと熱烈な愛情にほだされて二人は夫婦になる。
平穏な生活を営み始めた二人だったが、そこにメロディの母親がやってきたことで状況が変化していく…。」




映画の冒頭でラリー・デヴィッド演じるボリスは明確に言う。
「人生に意味など無いのだから楽しんだもの勝ちだ。誰かを傷つけないのなら何でもあり(Whatever Works:原題)だよ」
ここまではっきりした意見を持ちながら自身は世の中を嫌悪し、夜中にヒステリーを起こし自殺未遂までするような悲観的な暮らし。
全然人生を楽しめてなどいないじゃないかと思わずツッコミを入れたくなるが、ここで劇中の所々でなされる演出が意味をなしてくる。
友人との会話から突然わたしたち観客に向かって話しかけてくるあの演出だ。
物語の中でこの偏屈老人のパートナーになるメロディは紛れもなくわたしたち観客のメタファーだろう。
(ひょっとするとボリスにチェスを習ってボロカス言われる少年少女達も)
つまり今の彼にとって何より楽しみなのは若者へ悪態という名のアドバイスを送ることなのだ。
その視点から見ると彼のなんと愛おしいキャラクターなことか。
なんか似たような人がいたような、と頭をひねってみると、ああ!いましたね。
楽天名誉監督の野村さん。
ボヤキ、小言、時には小憎たらしくなるそんな言動の端々にある素直にメッセージを送り出せない彼らの可愛らしさを思うと、なるほど人生とはなかなか味わい深いものだと気づきを与えてもらえる素晴らしい作品だった。



ウディ・アレンの映画術

ウディ・アレンの映画術