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GOOD HAIR

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映画「グッド・ヘアー 〜アフロはどこに消えた?〜」
監督:Jeff Stilson


クリス・ロックが、自らの娘からの「何で黒人の髪はチリチリなの?」という子どもならではの素朴な疑問をきっかけとして、一気にアフロアメリカンのルーツに迫っていく。
from 松島・町山 未公開映画祭


中学生になった頃、突然髪の毛がパーマになった。
いや、おそらく小さい頃から天パーだったのだろう。
僕はそれをそのとき初めて自覚し嫌悪した。
憧れたのはテレビや雑誌で見る人たちのようにかっこよく決まった髪の毛。
僕は使い方の分からない整髪料を買ってきて鏡の前で頭の中に描いた理想に近づくように塗りたくった。
学校までは歩いてわずか5分強。
それでも学校に着けばへにゃへにゃしなってまとまりのない髪の毛を見る羽目になった。


高校生になるとまわりの友達が好んで髪の毛をパーマにしだした。
僕は相変わらず自分の髪の毛が好きではなかったが、周りから「髪の毛いいよねぇ」と言われることが増えて悪い気はしなかった。
けれど、そんな彼らのパーマは綺麗にまとまっていたり、「あえてパーマにしてます」感が全開のおしゃれなパーマだった。
僕の天パーは中途半端でみすぼらしくて、結局嫌悪感が募るだけだった。


高校3年生のときにThe Strokesに出逢ったことが僕の転機だった。
小汚いジーンズにボロボロのスニーカ−を履いた彼らの格好はまるで現代的じゃなかった。
髪の毛だってせっかくCDに載せる写真だってのにみんなドロドロで全く手入れなんてされていなかった。
けれど彼らは圧倒的にかっこよかった。
それから僕は抵抗することを諦めて短く整えていた髪の毛を再び伸ばし始めた。
伸びれば伸びるほどうねりを増していく髪の毛に僕は生まれて初めて満足感を得た。
自分史上最も髪の毛が長くなった頃、僕につけられたあだ名は松田優作だった。


アルミ缶を溶かしてしまうほど強力な薬剤が使用されている縮毛矯正剤。
何千ドルもするサラサラのエクステンション。
黒人女性の真っ直ぐで指通りのいい髪の毛への執着を僕は笑えないし、否定できない。


映画を見終わって予約していた近所の理髪店へ。
「まだまだ地肌が見えなくていいですね。髪の毛が詰まってますよ」
鏡越しに話してくる僕より10歳以上年上の理髪師さんこそ髪の毛はフサフサだ。
ふうむ、次の悩みはこれですか。