夢ぅ

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「次のお店はわたしも行ったことがありません」と言ってうどんマスターが出してきた店が夢ぅ(むう)だった。
夢ぅ。その字面、その語感、そしてうどんマスターですら未達の店、夢ぅ。
頭の中では厭が上にもトンデモなあちらのムーがオーバーラップしてきてしまう。
経営者が某組織の一員だとか、はたまた異星人だったりするかもしれない。
もしくはかなりのスピリチュアリストでうまいうどんを餌に客を怪しい世界へ勧誘しているかもしれない。
呑気な顔でハンドルを操るうどんマスターの横で筆者は人しれず心拍数を高めていた。
「えーっと、ここらへんなんですけどねぇ」
気がつくと車は今まで筆者を楽しませてくれていた香川の豊かな自然とは程遠い殺伐とした地区へと入り込んでいた。


「あれぇ、おかしいな‥」
地図を見ながらお店の場所を特定することに懸命なうどんマスター。
「なんかうどん屋がありそうな場所じゃないぜ」
「でも住所だとこのあたりなんですよ」
筆者も強めた警戒心を剥き出しにしながらあたりを伺うがお店らしき建物は見当たらない。
まさか知らぬ間に異次元に迷い込んだんじゃ‥。
疑念が疑念を呼ぶ。動悸が激しくなる。汗が滲む。筆者はうどんが食べたいだけなのに!
「とりあえずそこの角を曲がってみようぜ」
「はい」
曲がった先を道なりに進むと道路が広くなり、やがて大きな建物が。
怪しい団体の本部かと思ったがそこは競艇場
普段は来ようとも思わない場所だがこの時ばかりはこの強烈な現実感が筆者には頼もしく感じられた。
「やはりこちらではないですね」
競艇場の広い駐車場でいったん態勢を整えるとうどんマスターは当然のようにハンドルを今きた道の方へときりだした。
「ちょ、ちょ、戻るのか?」
「はい。多分見落としていただけみたいですし」
「あ!それならちょっと待て」
筆者はiPadを取り出しマップを起動。現在地から夢ぅを検索した。
「あ、やっぱりさっきのところですね」
横から覗き込んでいたうどんマスターが画面上に示されたルートを確認すると車は再びあの場所へと動き出した。
しかし店は見つからない。
いよいよヤバイだろ‥。筆者はいざとなればうどんマスターからハンドルを奪い取ってここから逃げ出す準備をした。
「あ!ありました!」
「へ?」
うどんマスターが指差す先には確かに夢ぅの看板が。
「なんだ、道沿いから少し奥に建物があって見過ごしてましたね」
「そ、そうだね」筆者はひきつった笑顔でそう答えた。


しかし、問題はここからだ。
この暖簾をくぐるとそこにいるのは妖しい教義を信仰する某宗教団体の残党かもしれない。


一つ大きく息をはいて扉をあける。
するとそこにいたのは!?


真摯にうどんをこねる御主人とそのご家族でした。
で、うどん。
ひやかけ。


宮武系といっていいのかな?
ねじれ麺。こちらも弾力の強さが印象的でした。


ちなみに夢ぅさん、ツイッターしてます。
http://twitter.com/udon_mu

ポストを見るにとても温かみのあるお店です。(ネタ記事失礼しました)