The Hurt Locker

このエントリーをはてなブックマークに追加

映画「ハート・ロッカー」 09年 米
監督:キャスリン・ビグロー
主演:ジェレミー・レナー


第82回アカデミー賞において作品賞、監督賞、オリジナル脚本賞、編集賞、音響編集賞、音響調整賞の6部門を獲得し、監督のキャスリン・ビグローは史上初の女性監督による監督賞獲得と今年の映画にまつわるトピックとしては外すわけにはいかない作品となった今作はイラク戦争で爆弾処理に従事する男達を描いた力作。
僕が見に行ったのは新宿武蔵野館、月曜日の15時の回だったのですが平日の昼間にも関わらず劇場には立ち見の人も出るくらいに大盛況で、さすが話題作だなと痛感する体験でした。
肝心の感想なのですが、これ実は見終わったあとで色々と考えました。
でも何か言葉にしようとすると適切な言葉が見つからないというか、未だに作品の力に圧倒されてしまっています。
単純に映画的な魅力とでもいうか臨場感は抜群に高いのでその点を取り上げて見応え満点ですと言うのは簡単なのですが、どうもそれだけで済まされる作品ではない気がしています。
それはやはりこのストーリーはフィクションでありノンフィクションだから。
イラクやアフガンでは今も紛争(戦争)が進行していることを考えたら、これをただのエンターテインメントで終わらせることは出来ませんよね。
僕はこの映画をみて戦争というものが根絶されたらどれだけ素晴らしいのだろうと、まずは思いました。
けれどそれはいわゆるイデオロジカルなそれではなくて、もっと根源的な部分で単純にそう思っただけ。
この映画が素晴らしいのは戦争の悲惨さを描きながら決してそれを夢物語的に「戦争いくない」という結論で終わらせないところで、それより誰も望みはしない戦争かもしれないけれど、与えられた使命には命がけで望む戦士達の高潔さや死と隣り合わせの精神状態をとても丁寧に描いているところだと思います。
だからこそ戦争の悲惨さを身をもって感じるし、そんな戦場に赴いている人々にもしっかり敬意をはらえるんですよね。
一部の利権をむさぼるクソ野郎以外に戦争を望んでる人なんていないのは言うまでもないわけで、だからこそイデオロギーの発露としてや、プロパガンダ的な目的ではなく純粋に戦地では一体どんなことが起きていて、そこにいる人々はどんな思いをしているのかだけを突き詰めた今作は、その意味において万人にしっかりと目に焼き付けて欲しい映画でした。
今年のベスト級であることは間違いなし。