Invictus

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映画 「インビクタス/負けざる者たち」 09年 米
監督:クリント・イーストウッド
主演:モーガン・フリーマン
   マット・デイモン


アパルトヘイトの終わりを告げたネルソン・マンデラ南アフリカ共和国大統領就任。
しかし依然として人種間の摩擦は解消されていない。
そんな状況の南アフリカにおいて世界中からの視線を集める一大行事が行われることとなっていた。
それはラグビーワールドカップ
テレビ中継では10億人もの人々がこの祭典を見るという話しを聞いたマンデラはある計画を思いつく。
ラグビーを通してズタズタに分断されたままの国民を一つにまとめようとしたのだ。
そこで白羽の矢が立てられたのは南アラグビーチームの主将であるフランソワ・ピナールだった。
下馬評では決して誉められたものではなかったチームは果たしてワールドカップで好結果を残すことができるのか。
そしてマンデラの計画の行方は?




御年80歳のクリント・イーストウッドによる最新作はとてもわかりやすい一作だった。
まずテーマがわかりやすい。
言うまでもなくメインのテーマは人種間の問題とそれを克服するに足る人の力強さ。
そして話しの推進力がわかりやすい。
こちらも言うに及ばすラグビーのワールドカップにおける南アの躍進がそれにあたる。
しかし後者のわかりやすさはある意味では映画のネックになりうることにもなる。
すなわちこの95年に行われたワールドカップの結果を知っている人にとっては映画のクライマックスにあたる部分に
ハラハラやドキドキといった映画的高揚感を感じることがどうしても難しくなってしまうからだ。
僕は幸運にしてラグビーに造詣が深くないためにそのハンデは背負わずに済んだのだが、
当然この手の問題は事実をもとにして作られる映画であればそのどれもが等しく抱えるものであることは間違いない。
そうなればこの手の映画が成功するか否かはテーマ設定とその描き方にかかってくるわけだが、その点においてイーストウッドにぬかりはなかった。
まず冒頭のシーンからして象徴的。
一本の道路を挟んで片方のフィールドでは緑の芝生の上で白人達がラグビーの練習。そしてもう一方のグラウンドでは土の上で黒人の子供達がサッカーに興じている。
鮮やかすぎる色彩の対比。それが皮肉なほどに美しくてこの国の状況が一発で頭に入ってくる。
この時点でツカミはOK。
あとはひたすらにモーガン・フリーマン演じるネルソン・マンデラの強さ、それはどんな苦難にも決してくじけないという意味での強さであり、
また過去を過去として受け止めて未来を築いていくために必要な寛容さという強さをとことん堪能させてくれる。


私が我が運命の支配者、我が魂の指揮官


これが映画のタイトルでもある詩「インビクタス」の一節なのだが、この言葉を胸に生きたマンデラはまさにその通りの生き方で南アフリカに奇跡を起こしてしまうから凄い。
この映画は全編に渡ってひたすらポジティブなメッセージに満ちている。
全てが上手く運びすぎて白々しいと思う方もいるかもしれないが念のため言っておきたい。
これは紛れもない事実なのだ。