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映画「ファイヤーフォックス」82年 米
監督:クリント・イーストウッド
主演:クリント・イーストウッド


クレイグ・トーマスの小説を原作にしたスカイ・アクションもの。
ソ連がステルス機能を搭載し、パイロットの思考によってミサイルの発射などの動作を行えるという超・ハイテク戦闘機MiG-31 ファイヤーフォックスを開発したという情報がNATOを震撼させた。
このままでは軍事力のバランスが崩れることを恐れたNATOはなんとかしてソ連に負けない戦闘機を開発しようとするが上手くいかない。
そこで彼らはいっそのことそのファイヤーフォックスを盗んでしまおうと考える。
白羽の矢が立ったのは元空軍のパイロットであるガント(イーストウッド)で、彼は飛行技術の高さはもちろんのことロシア語にも堪能のため今回の作戦には適任だった。
過去の戦いにおける心の傷を抱えたガントは果たしてこの任務を遂行することができるのか…。


この映画の作りははっきりと2部構成になっていて、前半はソ連への潜入から戦闘機を奪うまでのスパイもの的展開。
そして後半は奪い取ったファイヤーフォックスによるスカイ・アクションものという作り。
映画の初っぱなにガントが抱える心の傷の理由そして現在の状態が描写されるのですが、その伏線には最後まで深く関わることなく物語は展開していきます。
見方を変えれば、いわゆる小説的な表現の似合う心理描写よりも視覚的効果の高い映画的表現、つまりスパイものであれば手口の巧妙さや間一髪!なスリル感。
スカイ・アクションものであれば当然戦闘機による戦いのワクワク感を重視した結果といえるでしょう。
イーストウッドの映画としては数少ない本格アクションである今作、作家性の高い人間ドラマだけでなく娯楽としてのアクションも彼のフィルモグラフィーの一つに加えたことは今日のイーストウッドを形作るうえで非常に重要な一作になったでしょうし、そのことを思えば彼が原作のもつPTSDに苛まれる主人公の人間的側面の描写を極力減らしたという選択にも納得できます。
ファイヤーフォックスが途中で給油をうけるというくだりがあるのですが、その一連のシーンがとても好きです。
「よし、おとぼけ作戦だ」て、お茶目すぎでしょ。
なかなか見応えのある良作で、イーストウッドの長いキャリアにおいて特異だからこそ外せない一作です。