Midnight in the Garden of Good and Evil

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映画 「真夜中のサバナ」 97米
監督:クリント・イーストウッド
主演:ジョン・キューザック
   ケヴィン・スペイシー


1994年に発売されて記録的なヒットとなったジョン・ベレントの同名ノンフィクション・ノヴェルの映画化。
初めはただ旅行雑誌への紀行文の執筆のために訪れたサバナの町。
ところが滞在中に取材の依頼主でもある町一番のお金持ちジムが殺人事件の容疑者として逮捕されてしまう。
裁判の争点は彼の行為が正当防衛なのか否か。
その一点の真相を巡ってサバナの町を奔走する主人公はその過程でサバナの町の魅力に引き込まれていく。
性的な問題というトピックも孕んだこの事件の結末は果たして…。


アメリカでは相当なベストセラーになった作品が下敷きということもあり、その手の映画にはありがちな
物語の背景の知識が観客側にある程度は備わっていることを前提とした脚本になっていて
ところどころとまどいを感じながらの鑑賞になった。
特に裁判が始まる前にジムと主人公が墓地を訪れて、ある老婆と共にブードゥー教のおまじないを始めるあたりなどは
あまりにも話がいきなりすぎて何がどうなっているのかが全くつかめないままになってしまった。
調べてみるとブードゥー教というのは映画の舞台となったアメリカ南部では土着的な民間信仰として半ば偏見を伴って認識されているようで
この辺りの基礎知識があればあのシーンにも多少おかしみを感じられたのかもしれない。
ただしそのような描写が代表するようにこの映画はただの裁判物とは一線を画している。
映画の推進力として殺人事件と裁判が中心にあることは確かだが、話としてもっとも面白い部分は主人公が初めは戸惑いながらも
徐々にサバナの町に引き込まれていく描写にあると思う。
その中でなによりの功労者は実在の人物であり映画には本人役で出演もしたレディ・シャブリというドラッグ・クイーンだろう。
彼女(彼?)と主人公のやりとりがとにかく面白いのだ。
主人公がハイソな黒人たちの舞踏会に招待されたことを知ったシャブリが自分も行きたいとわがままをいって断られ、
それなのに乱入してきて主人公を困らせるところの流れなんかはシャブリの愛らしさが全開で微笑ましくなる。
ちなみにシャブリはいわゆるオネエマンでこの人の存在もあってゲイに対する差別や偏見を取っ払っていこうという劇中の裁判でも言及された
テーマがあまり押しつけがましくなく主張されていてその辺りも素晴らしい。
この人の芸達者ぶりは本当に一見の価値あり。
他にもこの映画にはイーストウッドの娘であるアリシアイーストウッドが出演しているのだが、この人が本当に綺麗だった。
最初に出たときは「こんな女優さんいたっけ?」と思ったくらいチャーミング。
裁判の進行とサバナの魅力を交互に絡ませながら話を進めていくという構成がやや長尺な作品を引き締めるという意味で見事にはまっていて
イーストウッドの手腕が冴え渡っていた1作だった。