目から鱗が3000枚

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それくらい新しい扉が開かれていくような感覚を味わえる一冊。

無常の見方―「聖なる真理」と「私」の幸福 (サンガ新書)

無常の見方―「聖なる真理」と「私」の幸福 (サンガ新書)


全編を通して非常にラディカルで刺激的な主張が繰り返されているこの本ですが、その中でも個人的に一番くらった部分は著者であるスリランカ初期仏教長老アルボムッレ・スマナサーラ氏の「人間は年をとるとほとんどが保守的になっていく」という言葉でした。
それに対しての理由も凄まじくて、人が年とともに保守的になっていく一番の理由は無常を否定したがるからだ、と氏は言うのです。
年をとって自分の死とリアルに向き合う時期が来ると人は天国や極楽、またはそれに準じるような永遠不変にずっと続いていく何かにすがりたくなる、つまりお釈迦様が発見した最高の真理である「無常」に反して自分だけは変わらないのだという妄想に捉われるので物事が新しく移り変わることを嫌うようになる、要は保守的になっていくと結論づけています。
この部分には自分自身襟を正さなければな、と思いましたね。
一瞬一瞬、全ての瞬間を細切れにしてその全ての瞬間においてフレッシュでい続ける。これこそが無常の世界で生きていくということなのだと自分なりに咀嚼してみました。


ほかにも仏教は宗教にあらずとか、仏教は科学なのだとか本当にラディカルで刺激的な言葉がたくさん。
けれど確かに無常をその本質でしっかりと理解すればそこには以前このブログでも紹介した「動的平衡」があるわけで。
改めてシェーンハイマーの発見は科学においてとてつもない意義をもっているのだなと思いました。
もちろん科学なんてものがなかった時代にこの世界の在り様を見抜いたお釈迦様の観察眼、仏教的に言えば智慧の偉大さも実感しましたが。


蛇足ながら申し上げれば無常という真理は非常に取り扱いの難しい真理でもあって、人によってはまさにニーチェのいう虚無主義的な状態に陥ることもあるかもしれません。
しかし決断に生き、覚悟に身を置くことを信条にする人であればこの真理はきっと大きな後押しになることでしょう。
なぜなら僕達はいまこの瞬間にも次々に新しくなっているのだから。
何度だっていつだってやり直せばいいんだよ。
そういうことです。