9月9日 やまうち・小縣家・長田うどん

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うどん界の革命児であるSHIRAKAWAを出た我々が次に向かうは、そんなSHIRAKAWAとは全く真逆を行くオールド・スクール、プリミティブ、老舗、修辞はなんでもいいがとにかく昔ながらのやり方、味を提供し続けるやまうちさんだ。
どれくらい昔ながらなのかをうどんマスターの言葉を借りて説明すれば
「燃料が薪なんです」
という単純明快な一言に尽きる。
この御時世にうどんの鍋を薪の火で沸かしている…。
「ある意味ではこちらのほうが革命的かもしれんな」
そんな感慨を胸に車はどんどん人里離れていく。
基本的香川県にはいわゆる素敵な景色を見せてくれる場所が多いのだけれど、やまうちさんのある近辺は自然が綺麗とかいうよりは、ただ手付かずのまま残っている、そんな風に見える。
そして車はそのやまうちさんへ到着する。
前評判通りの佇まい。

でもちゃんと人はいるんだよな…。

そこらへんにうどん愛好家達の愛情の深さとうどんの持つ魅力の大きさを改めて思い知る。
ちなみに上記の写真、左手前に積まれている薪が件の燃料たちである。
「わてらがあんさんたちにうどん食べさせたるんやでぇ」


そして店内へ。お店の人たちはベテランさん揃い。頭の下がる想いです。


12:ひやあつ

うどんとはコレだ、といわんばかりの超直球ど真ん中の見た目、そして味。
派手さはないかもしれない、古臭いかもしれない、でも確実に日本人の郷愁を誘う、そんな優しいうどん。
何も変わらない、変えない、そのままでずっとやってきているそのことがある意味では本当に革命的ですらあるだろう。


ほっこりと心に暖かな何かをもらった我々はさらなるうどん屋を目指して再び出発。
「次のところはチャンスタイムですよ」
「どうして?」
うどんマスターの言葉に筆者はひねりのない質問を投げ掛ける。
「いいうどん屋がすぐ隣に並んでるので。うどん屋めぐりにとっては数を稼ぐチャンスです」
その言葉を聞いて筆者が苦笑いを浮かべたのは想像に難くないだろう。
やまうちさんのうどんに心が休まったのはまぎれもない事実ではある。しかし身体的には完全にオーバーロードなのだ。
それに今日の朝ホテルを出てから口にしているものは当然ほとんどがうどん、つまり炭水化物のみで、筆者は完全にコンスタペーション、便秘中でもある。
とにかくおなかの張りったらない。
しかしそんな筆者はお構いなしにうどんマスターは先を急ぐ。
今回の案内役を頼んだのは筆者かもしれないが、それにしても律儀すぎるぞ!と心のなかで筆者は呟いた。
そしてやまうちからわずかの時間で車は次の店である小縣家に…。
さらにこの店、風貌は完全にいわゆる国道沿いによくある和風ファミレス然としていて、今までのうどん屋のことを考えるとじゃっかん懐疑的にならざるを得ない。


どう考えても異質だ…。
「さあ行きましょう」
促すうどんマスター。
「ちょっと待った」筆者はささやかな抵抗を試みる。「この店、駐車場のところに大きなトイレがあるからさ、ちょっと頑張ってみるわ」
そして筆者はトイレへ。しかし思ったとおり。アレは間違いなくそこにあるのにどれだけ頑張っても頭すら出てこない…。
「つ、辛い…」
そう呟きながら筆者は笑うしかなかった。
それでもなんとか長い格闘の成果もあって少しだけ胃の中にスペースを作った筆者はうどんマスターのもとへと急いだ。
「いやー、すまん。待たせた」
先程よりだいぶ明るい声の筆者。しかしそんな筆者とは裏腹にうどんマスターの顔色がよくない。
(待たせすぎたかな…?)
心配顔の筆者にうどんマスターから思わぬ発言が。
「待ってる間に満腹感が…」
何と!!まさかの立場逆転!!
しかし筆者は利己的だ。
「そうか、でも俺はもう大丈夫だから。さあ行こう」
苦しむうどんマスターを尻目に筆者は意気揚々と店へ入っていく。
すると、
「いらっしゃいませ。お二人様ですね、こちらへどうぞ」
と店員さんが迎えてくれた。
やはり明らかに今までのうどん屋とは違う。完全にお店としての体裁が整っている。
店員さんに誘導されるがままに席につき、筆者の懐疑はさらに深まっていく。
(こんなファミレスまがいの店で本当にうまいうどんが食えるのか?)
しかし、そんな筆者の不安は注文を通してすぐに解消された。
そう、それは突然訪れたのだ。

!!!!!
何を言うでもなく当然のこととして店員が持ってきたもの、それがこの大根だ。
「いや、僕たち二人ですけど…」
二人分にしては明らかに大きすぎる大根に戸惑う筆者。
しかし辺りを見回せばどの席にも同じ大きさの大根が。
「ここではこれが普通なんです。これを自分で好きな量におろして食べるんです」
うどんマスターはクールに筆者を説き伏せた。
そして筆者はさきほどまでの無礼を深く恥じた。
(さすが香川。さすがうどんの聖地。どの店も普通じゃないぜ)
悔い改めた筆者は、それではありがたくと大根を丹精込めておろさせていただいた。


13:しょうゆ

頼んだのはこの店が元祖だというしょうゆうどん。
そしてうどんを口にした筆者はさらに後悔の念にさいなまれることになる。
つまり、旨い!旨いのだ!
個人的にかなり好きな食感、そして味。
この店もうどんにすだちがついており矢張りこれがさわやかさを引き立てて食をすすめてくれる。
もちろんおろしたての大根もピリリといいアクセントで胃にはいい刺激。
さきほどまでの満腹感と懐疑はどこへやら。あっという間に平らげてしまった。


しかしここで安心はできない。
なぜなら次の店はもう目と鼻の先、交差点のはす向かいで既に我々を待ち構えているのだ。
「だいぶきつくなってきました…」
ここにきて箸の動きが鈍ってきたうどんマスターはついに弱音を吐いた。
しかし行かねばならないのだ!それがうどん好きの宿命なのだから!
そして今日最後の店、ながたうどんさんへ。

もっと早く出会いたかったね…。


店内の雰囲気はさきほどの小縣家さんがファミレスだとすればこちらの長田うどんさんは大衆食堂といったところか。


14:ひやし

ここの麺は弾力がとても好いのでその麺の魅力を堪能できるひやしは大正解。
それにしても「腹いっぱいだー」なんていいながらうどんを前にすると矢張り食えてしまうから不思議。


とにかくこれにて今日の予定は全て終了!
伺ったうどん屋はその数9軒。よく頑張りました。
そしてすべてのうどん屋さんへ、おいしいうどんをありがとう!