9月9日 日の出製麺所・SHIRAKAWA

このエントリーをはてなブックマークに追加

「日の出は開いてる時間が限られてるので、計画を立てる時にはとにかくここを中心に考えたんです」
これはうどんマスターが今回の旅で何度か力説してくれた話。
それもそのはず、次に向かう日の出製麺所さんはその名の通り本来は製麺を中心にしているお店でお昼の一時間だけ限定でその場でうどんを食べさしてくれるスタイルをとっているのだ。
そのためうどん屋めぐりでこのお店を組み込むのならば必然的に回るお店の時間そして場所の設定はここを中心にせざるを得ない。
「なのでここは万全を期して高速を使います」
うどんマスターの用意周到ぶりに感心しつつ筆者は助手席で観光に余念がない。
「さっきから気になっていたんだけどあの山はなに?」
「あれはさぬき富士といいます。今日の日程ではあの山を中心に周りを動いていくんですよ」

富士の冠は伊達じゃない。綺麗なコニーデ型。
我々の車は交通量の少ない高速を文字通り高速走行で走りぬけ早々に次の目的地へ。
「確かこの辺のはず…」
と、駐車場から歩きながらその店を探す。けれどすぐに判った。だって…

もう並んでる!!
開店までまだ1時間弱、そして思い切り普通の平日だってのに。
「日の出さんよぉ、こりゃあ期待させてくれるじゃねーか」
筆者はそう呟きながら写真撮影に勤しむ。
堂々たる店構え。

あらかじめ注文を聞いて回るお姉さんにこの日初めての大盛り宣言をした筆者はそのままその時を待つことに。
気が付けば我々の後ろにもどんどん人がくっついていく。
「ますます期待がたかまるねぇ!!」
するとお店の扉から精悍な顔つきの御主人らしき人が登場。
そしてその口から発せられた言葉に我々は狂喜する。
「いいよ、もう入ってもらえば?」
うわーーー!!まさかの”巻き”入りましたーーーー!!
喜色満面に続々と入店していく人々。しかし需要に対して席数は多いとはいえないために我々のすぐ前のカップルのところでいったん打ち止め。
「こりゃ残念」
と、上がったテンションが下がりかけたところで先ほどのお姉さんが
「じゃあこちらへ」
と、我々を誘導する。
見ればうどんマスターも訝しげな顔だ。しかしお店のすぐ隣に入った我々は再び狂喜する。
なんとそこにはテーブルにイスが並んでいるではないか。
「何これ!?前と違う」
うどんマスターも驚くほどの正にサプライズな展開で幸運にも我々は思いのほか早くうどんにありつけた。


10:かけ(大盛り)

だし汁は机の上のポットから。
そしてネギもこうしてお好きに入れましょう。


で、肝心のお味の方ですが…
ハンパなし!!!!!
今までのところももちろん美味しかったけど、ここはとにかく麺の旨さが段違い。
いつまでもすすっていたい、そんな欲望に駆られてしまうほど麺を喉へ流し込む快感が襲ってくる。
お昼の一時間しか開かずにこの旨さ。そりゃ人は集まるわっ!
もう半ば怒りに近い感情さえ噴出させながら器を戻してお勘定を。
「かけ大盛りです」
「はい。じゃあ200円ね」
ええええええええ!!!!!!!
もういい加減にしてくれ!どこまで俺を憤らせるんだ!
この旨さ、そしてあの量で200円はもうキセキ!
「ちくしょー!また来るからな!」
そういい残して我々は日の出を後にした。
ちなみにうどんマスター曰く、香川ではたくさんお土産うどんが販売されているが実際の旨さが限りなく完璧に近い形で再現されているのはここ日の出さんのうどんだということ。
なのでもちろん筆者もここのうどんをお土産に。うどんマスターも買い込んでました。
みなさんも是非。


ということで予定よりもかなり早く日の出を出発出来た我々は次の目的地へと車を走らせる。(この文章”出”が多い)
しかし意気揚々と車を走らせるうどんマスターとは裏腹に助手席の男には異変が起きていた。
「腹が減らねえ!!」
そう、この日は朝から既に5軒をはしごして、日の出ではあまりの期待値の高さゆえに大盛りまで頼んでしまった筆者の胃袋はすでに許容量いっぱいの”あとは優雅に昼寝でも”状態なのだ!
しかし筆者は朝から「とにかくうどんを食わせろ」と居丈高にうどんマスターを恫喝していただけに今さらそんなこと言えないYO!!
さらに運転席のいまや筆者にとっては地獄への水先案内人でしかないうどんマスターは
「次の店はとにかく”コシ”がハンパないっす。とにかくすごいですから。いやぁ早く食べてほしいなぁ」
と、その水先案内人ぶりにさらに磨きがかかって誰もヤツを止められない。
「そ、そうかぁ…」
筆者は明らかに引き気味の生返事をするだけであとは流れる車窓の景色を眺めているだけだった。
やがて車は海沿いの道へ。
この旅の中で唯一の曇り空。

まるで筆者の心境のよう…。
そして次の店はその海を目の前にした場所にあった。

上戸(じょうと)うどんさん。
駐車場に車を停めるとうどんマスターは勢いよく飛び出していく。
その後ろで筆者も観念して外へ出て行く。
しかしお店の前まで来るとどうも様子がおかしい…。
「あっ!!」
うどんマスターが声をあげる。
「どうした!?」
筆者も駆け寄っていく。
「……閉まってます」
「閉まってるな…」
「え、どうして?おかしい、定休日じゃないのに」
狼狽するうどんマスター。小さくガッツポーズの筆者。
外から中を覗くと机の上に書置きが。

インフルエンザのためにお休みを頂きます


何と新型インフルの猛威が筆者に思わぬ恩恵を!(不謹慎)
リアルに膝から崩れ落ちそうなほどショックを受けているうどんマスターの肩に優しく腕をまわすと筆者は彼を慰めてやった。
「まあ今回は残念だったな。でもインフルエンザじゃ仕方ないよ。大丈夫。俺は気にしてないからさ。さ、次へいこう」
「僕、この店にはこれで四回目になるのに実際には一回しかうどんを食べられてないんです。一回目は前の場所からここへ移転をするときで開いてなくてダメ。二回目は麺が売り切れでダメ。三回目はやっと食べることが出来て、本当においしんですよここは。それがこんな理由で今回もダメだなんて…」
「そっか。もしかするとお前とこの店には縁がないのかもしれないな」
「そんなことないっす!」うどんマスターは筆者の心無い一言に彼には珍しい怒気を含んだ言葉を返した。そしてそのまま筆者の顔を見るとこう言った。「よ、喜んでますよね?まさかお腹がいっぱいでもう食べられないとか言いませんよね?」
「ば、ばかやろうっ!」筆者は明らかにオクターブ上がった声で否定した。「俺がこの旅をどれだけ楽しみにしていたか。それはお前が誰よりも判っているだろうが。さ、開いてないもんは仕方ねぇ。次だ、次。」
完全に疑惑の目でこちらを見るうどんマスターを振り切って筆者は急ぎ車に乗り込んだ。
「次だ、次」
勢いだけでその場を切り抜けようと筆者はうどんマスターを促して車を走らせた。
しかしそこはさすがの水先案内人である。うどんマスターはすぐに気を取り直して次の店の話を始めた。
「つぎの店はうどん界の革命児と呼ばれています」
筆者がその理由を問うとうどんマスターは答えた。その要旨はつまり、既存のうどん屋に比べて店のつくりが洗練されていること、注文を受けてから一つ一つ調理を始めること、そして何より店の名前がSHIRAKAWAとアルファベットで表記されていることである。
「なるほど。つまり名前をあえてアルファベット表記のSHIRAKAWAにすることで副題の”破壊者”をあえて”HAKAISHA”と表記した映画クローバーフィールドのようにうどん界の革命児、つまりHAKAISHAになろうとしたわけか」
うどんマスターは完全に筆者を無視した。
そして我々はそのHAKAISHA、いやSHIRAKAWAへ到着した。
外観はこんな感じ。

ここだけ見ると取り立てて特別な感じはしないが、店内に入ると合点がいった。
不覚にも写真はないのだが、店のつくりは全席カウンターのお洒落なバーのようなつくり。さらにBGMとして久石譲の黄金のメロディーをそれもオルゴールアレンジで流している。
店内BGMだけでも特異なのにそれがさらにジョーのオルゴール風味とは!!
さすがうどん界の革命児!
さらに注文を通すとまるでFPMの田中知之氏を彷彿とさせる風貌のお洒落な御主人が奥から麺を持ってきて鍋へ投入。
さらにこの店御自慢のたこちく・えびちくも注文が入ってから揚げ開始。
期待がたかまるぅ!


11:えびちくぶっかけ

実を言うと先ほどの満腹感はまだ完全には解消されていなかった。
しかしこの店のぶっかけにはすだちがついてきており、これが最高に食べやすさを増してくれた。
おかげで麺がツルツル喉を通る。さわやかお洒落なうどん。まさにHAKAISHA!
そしてえびちく!

これ本当に美味しい!あげたてだから歯ごたえもいいし何よりえびの甘みがうどんだらけの胃の中に素晴らしいアクセントをくれる。
SHIRAKAWAさん、好きやわぁ。
さあ俄然、元気が出てきたぞ!
次のうどんかかってこいやぁ!