Flags of our fathers

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映画「父親たちの星条旗
監督:クリント・イーストウッド
主演:ライアン・フィリップ as ジョン・“ドク”・ブラッドリー
   ジェシー・ブラッドフォード as レイニー・ギャグノン
   アダム・ビーチ as アイラ・ヘイズ


普段は選択肢としては優先順位が低いのです。戦争映画。
理由はやっぱり”逃げ”なのかもしれませんが見るのに少しパワーを要するんです。
適当には見れないというか見たあとに不可避的に様々なことを考えてしまう。
それ自体は必要な行為だと思います。そうやって一人一人が何かを感じ取っていくことで学べるものも増えていきますし。でもね。
というのが僕の戦争映画への基本スタンス。
なのでイーストウッド詣でをしながらどのタイミングでこの映画、もちろんこの流れで次はアレに行きます、を見るかが僕の懸案でした。
見終わったいま思うことは、流石やわイーストウッドはん、これに尽きます。
どういうことかというとこれはもちろん戦争映画ですが、単純に「戦争はアカン」とか「戦争の大義名分はこれだ」とかその他どんなイデオロギーでもいいですが戦争について何かを訴えるための映画ではないのです。
もちろん戦闘シーンはあるし、けっこうグロな描写もありますがそれは映画を映画として成立させるための一つの装置に過ぎません。
ではイーストウッドはこの映画で何を描いたのか。それはやはり人間です。
昨日まで戦場で生き死にの現場にいた彼らがたった一枚の写真のために英雄へと変わっていく姿。いや、彼らが変わったのではなく彼らを取り囲む人々が変わったことによって彼らは空っぽの英雄にさせられてしまう。
それでもあるものは仲間のためと従順にその役を演じる。またあるものは仲間のためだからこそと反発をする。
とにかく英雄が好きなアメリカ人。その内部にあってイーストウッドはまさに内部告発としてこのメッセージを綴る。
英雄とは誰かが何かを取り繕ったり隠したりするために作り出すものだ、と。
戦争という大きなテーマを冷静かつ平等な視点でもって人間を描くために使いこなしたイーストウッド
人間のどうしようもない醜さを描きながら同時に人間の素晴らしさを描き出す。
彼の目線は常に弱きもの小さきものへの愛と尊敬に満ちているから信頼できる。