覚悟、そして命をつなぐ

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映画「グラン・トリノ」見ました。


グラン・トリノ

監督: クリント・イーストウッド
主演: クリント・イーストウッド


色々な角度から読み解くことの出来る映画だと思う。
面白い観点としては主人公のウォルターが実の息子には伝えられなかったアメリカン・スピリットを彼が最も嫌っている黄色人種に伝えることになるという皮肉というか、実際いまのアメリカで始まっている社会的な変化がここで扱われていることがあるだろう。
いまやアメリカにおける人口数でのマジョリティは白人から徐々に有色人種、特にアフリカン・アメリカンに移り変わってきているわけで、この映画の最後でイーストウッドが描いた光景はまさにこれからのアメリカに求められる選択肢なのではないだろうか。
そしてそれは人種という枠組みだけに留まらず、老いていく者から伸びていく者へ生きる希望を伝えていくという人間全般に課された使命としてすらこの映画は語っている。
イーストウッドの映画が素晴らしいのはとことん人の孤独を炙り出しにして観客に見せつけながら、じゃあそのなかでわたし達がどのようにその孤独と向かい合い、最後にはそこからどんな希望を見出せばいいのかを伝えてくれるところにある。
単純にハッピーエンドでもなく、かといって悲しいだけの結末でもないという抜群のバランス感覚で物語を展開する彼を讃えるのに適切な言葉が見つからない。
名監督であり名俳優である以上に愛のなんたるかという命題に明確な答えを見つけ出した一個人として本当に優れた人なのだろう。
ことし僕は2度泣いた。そのときエンドロールには決まって彼の名があった。
クリント・イーストウッド
彼の映画がある限り生きることをあきらめなくてよさそうだ。