9月10日 谷川米穀店

山越えさんというキングとの邂逅を果たしてバーンアウト症候群寸前の筆者。
しかしその隣で一人俄然鼻息を荒くする男がいる。そう、その男とはここ最近の香川レポートですっかりお馴染みになったであろううどんマスターである。
「さあ、ついに真打登場ですよ」
彼の興奮は今やこの旅で一番と言っていいくらいに高まっている。
まあ、それもそのはずで我々が次に向かう谷川米穀店さんは以前から彼が
「ナンバーワン」
と標榜して止まないうどん屋さんなのだ。
「その店はそんなに旨いの?」
筆者は一度そんな単純過ぎるほどの質問を彼にしたことがある。うどん好きとしては聞いておかなければならない質問だ。
するとうどんマスターは朴訥とした彼特有の口調を変えることなく、しかし熱っぽく答えた。
「まず何より場所が最高なんですよ。大自然に囲まれた秘境にあって。あの店は行くだけで満足感があります。そしてうどんはもちろん旨いです。前回行ったときは思わず4杯もおかわりしてました」


駐車場を出た車は大きな道路には戻らずに一路山道へ。
うどんマスターはなおも興奮抑えきれぬ様子で
「山越えから谷川米穀店への流れはうどん巡りをするなら一番贅沢な流れなんですよ。まずどちらもうどんがめちゃくちゃ旨い。そしてこの道!もう本当に田舎道で何もないんです。その景色が最高で。だってこんな道、普通の人は絶対に通りませんからね。まさにうどん好き、そして田舎好きの人のためだけの特別な道なんです」
と熱弁を振るう。
彼は根っからのうどん好きであると同時に自然(特に山間部)好きなのだ。
それにしても確かに車窓から見える景色は素晴らしい。
窓から手を伸ばすと吹きぬける風もここではなぜかとても涼しくて清い気さえするではないか。
しばらくそんな緩やかな雰囲気を体全部で受け止めながら我々の車は着々と進んでいく。
そして
「あ、ここです」
と、うどんマスターの到着を知らせる声が。
「?」
しかし筆者の頭にはハテナしか浮かばない。
「え、ここ?」
「はい、ここです」
「はー」
この旅を通じて讃岐の国のうどん屋たちのお顔は色々と見てきたつもりだったが、ここまで素っ気無いというか判りづらい店もなかった。

さて、お店はどこでしょう?といった佇まい。
ちなみにここが入り口。

この店が何かお店をやっているのだと判るのは上記の写真で小さく見える食堂と書いてある板(それも手書き)と米屋のマークだけ。
うーん、素晴らしい!だって結果としてこの店には今回の旅で一番というくらいの行列が出来てたわけだしね。
ここに来ると世間で言われるようなマーケテイングだの、広報活動だのがアホ臭くなってくる。
ほんまに好きな人に真摯に向き合えばこんなアクセスの悪いところでも店構えが味気なくても人は集まるんだよ。
さて、それにしても早く着きすぎた。開店まではまだ1時間弱はある。
そこで!

やっほーい!と店のすぐ下を行く川べりでしばし水遊びに興じる。
しかしここは山はあるわ川はあるわでほんといいところ。
手を入れると水も冷たい!
しばし童心に返りました。
と、そんな風に遊んでいると、
!!!

写真はちょっと判りづらいけれど、行列が出来てる!
一番乗りで来たはずがまさかの開店からしばらくはお待ち下さいコース!
こりゃいけねえと我々も遊びを切り上げて列に入ります。
そして待つことしばし。ついに店が開いた!
でもすぐに店は人でいっぱいに。

おばちゃんもフル稼働でお店を切り盛り。

おっちゃんも負けてへんよ。


しかしうどんてのは素晴らしいね。
だいたいが出来上がるのも早いし、食べ終わるのも早いしで少しの行列ならすぐに席が空きますわ。
そして、はい、うどん!
18:ひや

思わず
「キレイ!」
そう言いたくなるほど麗しいルックス。
そしてその見た目どおり喉越しも流麗にして味素晴らしきかな。
一切の飾りもなくただうどんだけで堂々とここまでの世界をつくるとわ、うどんマスターの太鼓判も合点がいきますわ。


そして、はい、お代わり!
19:あつ

これも旨い!


後ろで列もつかえていたこともあって、筆者はうどんマスターを置いて先に外へ。
近くの自販機でお茶を飲みながらゆっくりと胃をほぐす、がうどんマスターがなかなか現れない。
そして20分くらい経ったころにようやく登場。
「どんだけおかわりしたのよ?」
「いや、うどん自体は今回も4杯だけなんですけど、相席した人とうどんの話をしてまして…」
そんなうどん好きたちの集まる店。
谷川米穀店、オススメです!